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JRA、24年ぶり“ストライキでの開催中止”の可能性。『ウマ娘』特需など業界は好況も恩恵に浴するのはごく一部と膨らむ厩務員らの不満

中央競馬(JRA)の厩務員らが加入する4つの労働組合が、調教師会と競馬会に対して今週末18日と19日の開催ストライキを通告。このまま労使交渉がまとまらなければ、今週末の開催が中止になる可能性もあると、競馬ファンの間で注目されている。

現行の新賃金体系を廃止することなどを求めている4労組だが、スト権投票の結果今月9日にスト権を確立し、ストライキ通告に至った模様。ちなみに今回予定されているストライキは、競馬開催にまつわる業務をストライキするというもので、通常の調教などの業務は普段通りに行うという。

今週末のJRAは中山・阪神・中京の各競馬場で開催予定で、19日の阪神大賞典をはじめ4つの重賞レースが各地で行われる予定だが、仮にストが実施されれば、それらの開催は中止になる可能性が高いとみられている。

売上3兆円超回復で業界は好況も…

昭和の時代にはかなり頻繁にあったというものの、直近では1999年以来行われていないというJRAの厩務員によるストライキ。そのケースでは、4月3日の中山・阪神・中京のレースが中止となり、その日行われる予定だった重賞レースの阪急杯が、翌週に延期になるという影響があったという。

今回労組側が求めているのが、新賃金体系を廃止し、勤続手当を含め従前の賃金体系に戻せということなのだが、この新賃金体系が施行されたのは2011年のこと。年間4兆円超えを達成した1997年をピークに、右肩下がりが続いていたJRAの売上だが、この2011年は東日本大震災の発生も影響し、2.3兆円ほどまで下落していた。

そのような状況を受けて、コストカットといった意味合いも兼ねて提示されたのが新賃金体系だったようで、厩務員側もその時は業界全体が危機に陥っている状況を鑑みて、それを受け入れたようだ。

ところがJRAの売上はというと、その翌年からは一転して右肩上がりに。特に近年はコロナ禍の影響もあった他の公営競技と同様に売上の上昇ペースが上がっており、さらには『ウマ娘』ブームによって新たなファン層の獲得にも成功。そんな特需もあり、2022年の売上は前年比5.3%増の3兆2,539億707万6,200円と、2年連続で3兆円超えを達成する結果となった。

このように、業界的には一時の危機的状況からは完全に脱したといっても良さそうで、また今年以降はコロナ絡みの規制が緩み、さらなる上がり目も期待大といったところ。しかしながら厩務員はというと、不況時に飲まされた賃金体系のままで、そんな待遇の悪さも影響してか、就業希望者が減り続けているようで、労働力を外国人で補うしかないといった状況にまで陥っているという。

JRAといえば、レースの国際競争力を高めるといった目的のもと、今年から有馬記念とジャパンカップの1着本賞金を1億円増の5億円にアップさせるなど、G1競走の賞金の大幅増額が相次いでおり、なんとも景気が良さそうなのだが、そんな業界の好況も恩恵を受けるのはごく一部に留まっているというのが、厩務員側の主張のようだ。

16日の団体交渉が決裂すればスト突入か

スポーツ紙などの大手メディアは今のところほとんど取り上げていない、今回のストライキの件なのだが、労組サイドのものかとみられるSNSアカウントの発信などによって、話が広く伝わる格好に。

競馬ファンの間からは、「生活していくためのストだから満足いく形で解決してほしい」「儲かってるなら現場に還元してあげて」といった、厩務員サイドを擁護する意見が多くあがっており、さらにはスト中も調教や馬の飼育などは普段通り行うということで、「これほど馬優先主義なストライキもなかなか無い」と称賛する声も。

ただそのいっぽうでは、仮にスト実施により開催中止となれば、出走予定だった馬の調整に影響が出ないか心配といった見方も。さらには「今週競馬場に行く予定なんだけど」「名勝負間違いなしだったのに…」などといった、競馬ファンとしての素直な心境を吐露する声も多くあがるなど、その反応は様々といったところのようだ。

ちなみに本日16日に行われる団体交渉が決裂すれば、この週末はストライキに突入すると労組側は宣言しているのだが、その結果がどうだったのかは、今日午後5時時点では音沙汰がない状況。24年ぶりのストライキとなるのか、それとも回避か。多くの競馬ファンがそれぞれの思惑で、その成り行きを見守っているところだ。

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