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賃上げ格差が危険水域に。“満額”連発の大企業、“人手不足倒産”危機の中小…どちらもコスト高で物価上昇=斎藤満

人手不足倒産の危機

コロナ規制の緩和、訪日外国人の回復の中で、この需要をとらえられるかどうか、人手の確保が大きなカギを握っています。

観光地の宿泊施設や販売店ではインバウンドの回復で需要が高まっているものの、従業員が確保できずにこの流れに乗れず、経営不安に陥っているところもあります。

その中での賃上げ格差・賃金格差が、「人手不足倒産」の引き金になりつつあります。

忙しくなっても賃上げがない企業から、賃金水準の高い企業へ人が流れます。それだけに、多少無理をしてでも人材確保のために賃上げをせざるを得ないところも少なくありません。低賃金のままで倒産しては元も子もないからです。

中小企業でもサービス関連ではこれが喫緊の課題となっていますが、大企業でも日本では横並び意識が強く、同業他社が賃上げすれば、右へ倣えで上げざるを得ない面があります。

3メガバンクの初任給はこの10年以上の間、大卒で20万5,000円で横並びでしたが、三井住友銀行が5万円、24%増の25万5,000円に引き上げを打ち出すと、みずほも5万5,000円の引き上げを検討としています。

同業である企業が賃上げすれば、良い人材は高い賃金のほうに流れ、人材を取り損なうリスクがあるからで、人手不足は個別の業績の良否に関わらず、横並びの賃上げへと圧力をかけます。

賃金コストの価格転嫁

こうした人手不足は、企業に無理をしてでも賃上げをする要因になります。

その結果は生産性で吸収できないと人件費増というコスト高になります。これを価格転嫁すれば一段の物価高となり、価格転嫁できなければ収益をそれだけ圧迫します。

初めから価格転嫁が厳しいとわかっていれば、賃上げはできません。中小企業の中にはそれで賃上げを逡巡するところが少なくないと言います。

結局、物価高故に賃上げを迫られるのですが、その賃上げ分をまた価格転嫁すれば、さらに物価高をすすめます。

賃金物価の好循環と政府は言いますが、これまでは賃上げ分が新たな物価高につながる「悪循環」が一般的でした。だからこそ、欧米ではこの賃金物価の悪循環を断つために、無理に利上げで需要抑制をし、賃上げもインフレも抑えにかかっています。

Next: 賃上げ格差が現実に。物価上昇で「実質賃金」の低下は続く

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