GWはどう過ごされましたか?世間では空港や駅が旅行客で溢れている様子がニュースになっていましたね。「そろそろ航空株いけるんじゃないか?」と想像をしたのではないでしょうか?そこで今回は航空株を分析し、「航空株に投資して良いのか?」「株価はコロナ前に戻るのか?「JALとANA、買うならどっち?」といった疑問に答えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
国内旅行の需要が戻っている
あなたも感じられているように、旅行需要が回復しています。
具体的にどれくらい回復しているのでしょうか?
コロナの影響がなく、GWの日程が同じである18年と23年のGWを比較してみます。ANAとJALの予約座席数を路線別で見てみましょう。
出典:JAL・ANAプレスリリース、トラベルWatchより作成
両社ともに国内線の予約数が回復しています。特にJALはコロナ前を上回る座席を提供し、予約率も同水準です。もはや、コロナ禍は過去のものとなりつつあるようです。
では「GWでは人が戻ったし、航空株には追い風が吹いている!投資すべき!」と
考えて良いでしょうか?
いえいえ、実際はコロナ禍で航空会社の情勢は大きく変わりました。
特に財務状況と株価について、大きな変化があります。
コロナ前後で変わった3つのポイント
<国際線>
国内線は回復したものの、国際線の提供座席数と予約率は未だ回復していません。
その理由は何でしょうか?
大きな影響を与えているのが為替です。
コロナ前は2018年は1ドル110円前後でしたが、23年5月現在は135円前後です。加えて欧米諸国のインフレも影響しています。とあるツイートによるとアメリカでランチをしたら12,000円したそうです…
こんな感じのランチで12000円なり
もうアメリカの物価に頭がバグってきて、高いのかどうかわからん( ´_ゝ`)
わりと美味かった pic.twitter.com/hBYazCZUx3— リキリヌ| Rikirinu (@imrikirinu) May 6, 2023
円安かつ物価高で海外旅行へ行く動機は抑えられてしまうと感じます。コロナ禍が収束しても、日本人が海外に行くハードルは上がってしまっているように感じられます。
しかし国際線の利用者は日本人だけではありません。
実は国際線利用者はJALで70%が外国人、ANAは50%です。
下のグラフから訪日外国人と出国日本人の比率を見ると、コロナ前の2019年は訪日外国人の方が多いことがわかります。同様に国際線の回復も、外国人(インバウンド)の動向が重要になるのです。
出典:国土交通省
<支払利息>
コロナ禍で航空会社は利益を大きく減らしました。
ANAの2018年3月期の営業利益は1,650億円でしたが、2020年3月期は▲4,647億円まで減少し、JALも1,745億円の営業利益が▲3,904億円まで減少しました。
この収入減に伴う現預金の減少を補填するために、両社は金融機関からの借入で資金調達を行いました。
その結果、2018年3月期と比べて支払利息がANAは69億円→253億円と3.6倍、JALは8億円→91億円と11倍にまで膨れ上がりました。
結果、両社の経常利益は、支払利息によってコロナ前と比較して約20%減少することになってしまったのです。
コロナ禍の借入増加は、当面利益を圧迫し続けるでしょう。
<公募増資(希薄化)>
両社とも資金難が問題になる中、借入に加え株式市場から資金調達を行いました。
それが公募増資です。
公募増資によって発行株数が増えることで1株あたり利益(EPS)が下落します。すなわち、1株あたりの価値が減少し、同じPERで考えると株価は低くなってしまいます。これを「株式価値の希薄化」と呼びます。
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