消費者との接点を活かした経営戦略
そして、伊藤忠の経営戦略を見ると
「マーケットインによる事業変革」を掲げています。マーケットインとは顧客ニーズを起点としたビジネスであり、その逆は良い商品を売るというプロダクトアウトの考え方になります。商品販売の起点が顧客主体か、商品主体か、という違いですね。
そしてこのマーケットインの事業変革、は実現可能性が高いものと考えます。
その理由は大きく2つ
- 消費者接点が多く顧客データを取りやすいこと
- 情報・金融セグメントの存在
(1)についてはここまで説明した通りですが、やはり主体となるのはファミリーマートのデータです。いつ、どんな人が、どんなものを買っているのか、リアルタイムで情報収集が可能です。
(2)については情報金融セグメントには伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)というITソリューション会社があります。すでにCTCでは金融機関向けにデジタルマーケティングサービスを展開していたり、流通業界へ向けて商品開発やラインナップの拡充などの顧客サービス向上のためのサービスを運営しています。
つまりデータ分析をすでに行っており、商品化できることがわかります。このデータを取れる環境と、外部に売り出すだけの分析力があるため、マーケットイン戦略は実現可能性が高いと感じるのです。
この中期経営計画は連結純利益6,000億円を目標としていますが、23年3月期に8,005億円で達成しています。資源バブルの恩恵もあったとはいえ、会社の強みと戦略が合致しているからこそ、計画を1年前倒しで達成できたものと考えます。
あなたはどちらに投資したい?
いかがでしたでしょうか?強みと戦略が少し噛み合っていない印象の三井物産と、噛み合っている伊藤忠商事、という比較ができたのではないでしょうか?
最後に実際に市場の評価を比べて見ましょう。
23年3月期の当期純利益は三井物産が1兆1,306億円、伊藤忠が8,005億円と三井物産の方が最終利益額は大きいものの、時価総額は三井物産が7兆8,115億円、伊藤忠が8兆6,614億円と、伊藤忠の方が市場の評価は高いことになります。
23年7月14日時点のPERは三井物産が8.8倍、伊藤忠が10.2倍です。
ここまで解説してきたように、今後の成長性への期待と実現性がPERに反映されているものと考えます。あなたはどちらに投資したいと思いますか?
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年7月7日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。