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三井物産と伊藤忠、プロの長期投資家はどちらを買う?同じ商社株でも大きく違う成長戦略=佐々木悠

今後の戦略が…腹落ちしない

今後の戦略である中期経営計画を見てみると、大きく3つの要点があります。

  1. クリーンな低炭素社会へのLNG(液化天然ガス)や再生可能エネルギーなど次世代エネルギーとなるアンモニアや水素などへ移行するための案件を進める
  2. ヘルスケアや、病気を未然に防ぐ“未病”の分野。アジアで病院事業を手掛けているが、チャンスがある。
  3. 国内外のサプライチェーンの高機能化

これを見てあなたはどう思いますか?

私の率直な感想は、「えっ、そっち?」と言った感じです。

(1)の低炭素への移行は、他の総合商社でも行っています。しかし、既存の資源事業をさらに成長させる、という方向性があまり伝わってこないのです。

私はこの中期経営計画を見た時に、今の強みと将来の方向性が必ずしも一致していない、と感じました。

その理由は、次の伊藤忠商事の方が強みと戦略が合致している、と感じるからかもしれません。ここからは、伊藤忠商事を見ていきましょう。

非資源が強い伊藤忠

三井物産が資源に強いのに対し、伊藤忠商事は非資源の利益割合が高いことが特徴です。

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出典:23年3月期 各社決算会説明資料より作成

伊藤忠のセグメント別利益を見ると金属セグメントの利益が大きいことがわかりますが、それ以外のセグメントもしっかりと利益を出しています。

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出典:23年3月期 決算会説明資料より作成

なぜ伊藤忠は非資源分野に強いのでしょうか?

それは、伊藤忠商事の始まりは麻繊維の販売であることです。財閥系商社が国策で重厚長大(いわゆる資源など重化学工業)なビジネスをやっていたのと違い、軽薄短小な非資源分野のビジネスを通じて成長してきました。

その伝統は今でも受け継がれています。

伊藤忠商事の関連会社を見てみると、繊維セグメントにはconverse・Reebok・デサント・アンダーアーマーが、機械セグメントには国内最大手の輸入車ディーラーであるヤナセが存在しています。

また情報・金融セグメントがあることも特徴的です。このセグメントにはほけんの窓口、外為どっとコムが関連会社となります。その他にも食料セグメントでDole、evian、ロータス、スパムなどを取り扱っています。そして、ファミリーマートも伊藤忠の子会社です。

このように財閥系総合商社と違い、「え!あそこも伊藤忠なの!?」となるケースが多く、消費者との接点が多いことが大きな特徴です。

Next: 強みと戦略が噛み合う伊藤忠、市場の評価は?

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