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食料自給率が低すぎる日本の危うい現実。「有事の食料輸入計画」も商社に任せきり?=岩崎博充

米国一国に頼りすぎている日本の現実!

たとえば、台湾有事が現実のものになったときに、果たして、日本に食料品やエネルギーは入ってくるのだろうか……。台湾の上陸を目指した中国軍が沖縄などの在日米軍を攻撃した場合、日本は戦場となり、日本への食料や燃料を運ぶシーレーンがストップする可能性があると指摘する報道もある。
※参考:台湾有事が起きれば日本国民は半年で餓死する…「輸入途絶の危機」を無視する農林水産省はあまりに無責任だ 農家の利益を守るだけで、国民の利益を無視している | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)(2023年10月31日配信)

日本は、穀物類の大半を米国から輸入している。50%の小麦をはじめ大豆(73%)、とうもろこし(37%)という現実があり、米国への依存度が極めて高い。米国から日本に向かう食料品のサプライチェーンが、戦争の勃発によって止まってしまう可能性は少ないかもしれないが、米国が戦争中でも日本に対して同じ量を供給してくれるのかは不透明だ。

また、穀物類は確保できたとしても、中東からやってくる燃料はストップしてしまうかもしれない。中東からの長いシーレーンは他国の攻撃を受けやすくなり、船会社も二の足を踏む。燃料が止まれば、日本の食料生産も農耕機が使えなくなりストップしてしまう。トラックなどの輸送手段もなくなることになる。

食料、エネルギー共に海外に依存している日本にとっては、どちらか一方を失っても日本国民全員の命を危機にさらすと言っていい。食料安保は、エネルギーの確保とも直結しているわけだ。

商社まかせの有事の食料調達!政府を頼るのは無理?

日本政府の様々な政策の最大の欠点は、補助金という名のマネーをばらまけば、工業生産でも農業生産でも、生産性を上げて活性化できると考えているところだ。様々な規制を排除して民間の活力に委ねようとする、米国のような経済政策がほとんどできていない。農業政策も農家=農協を応援するあまり、後継者を育てられず、人口減少と相まって衰退の一途をたどっている。

たとえば、シーレーンがストップして穀物や肥料、飼料が海外から入ってこなくなったら、どうすればいいのか……。日本は国土の7割が山林だが、いざとなったら山林を破壊して、短期間で農耕地に転換する技術を研究するなど、1億2,000万人を食べさせていくにはどうすればいいのか。政府は、まずそこから始めるべきだろう。

小麦粉を輸入国別に見ると、アメリカ(約50%、2020年、以下同)、カナダ(約33%)、オーストラリア(約16%)となっている。日本とは緊密な3国で、台湾有事が発生してもシーレーンは大丈夫そうだが、この構図で心配なのは地政学リスクと言うよりも、気候変動かもしれない。米国の地下水資源が枯渇寸前だと言う情報もしばしば目にする。

日本には、うどん、パン、中華麺パスタと言った。小麦に対するニーズは高い。小麦農家に対しても米農家と同じようなインセンティブを与えることで、もっと生産性を上げられるかもしれない。安全保障の観点から、最近では、中国からの輸入依存度の高い品目の輸入先を分散させるための努力が行われているが、その影響もあって、食料品の価格が上昇していると言う現実がある。食料品の確保には、どうしても食料品価格の上昇という副作用がついてくる。世界的なインフレを抑える意味でも、今後は食料品の自給率を高めていくことが求められている。

いずれにしても、「不足時における食料安全保障に関する検討会」が11月8日に発表した資料によると「関係省庁一体となって食料供給を確保するために政府全体の意思決定や指揮命令を行う体制・仕組みが存在しない」と結論付け、首相が政府対策本部を臨時で設置できるようにする体制を作るようにと提言するにとどまっている。日本の食料安保が整うにはまだ道は遠そうだ。

image by: maroke / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年12月4日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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