中国は長期低迷するのか?貸し渋りと貸しはがし
このように、中国経済は厳しい状況になっている。もしこうした状況が続くのであれば、中国は日本のように長期低迷すると懸念されても仕方がないのかも知れない。
この懸念を背景に、日本では中国崩壊論がまた盛んに喧伝されるようになった。過去30年間、日本では中国崩壊論が花盛りであった。しかし、中国の急速な成長は続き、中国崩壊論が的中することはなかった。むしろ、「中国崩壊論の崩壊」が話題になる始末であった。しかしいま、中国崩壊論が改めて話題になるようになっている。
では中国は、本当に日本のように長期低迷するのだろか?
日本のメディアではすでに長期低迷が決まったかのような報道が多い。だが、やはりきちんと検証すべきだろう。結論から言うと、日本で報道されているような極端な状況には中国はならないと思われる。
まずは、日本のバブル崩壊後の長期低迷の状況を見て見よう。中国の現状との違いがよく分かるはずだ。
<日本のバブル崩壊後の長期低迷>
日本のバブル崩壊の引き金になったのは、日銀が実施した金利の急激な引き上げと、当時の大蔵省による「総量規制」であった。「総量規制」とは、銀行が不動産業界に貸し出す融資の抑制指示である。これらにより、銀行から不動産業に対する融資は大幅に縮小した。地価の高騰は、将来の地価上昇を見込んだ不動産会社が銀行からの融資で土地を購入し、その高騰を待って売り、利益を上げるという方法で発生した。地価高騰のカギは銀行の融資であった。それが急に融資されなくなったため、不動産会社は借金返済のために一斉に土地を売り、これが地価の暴落を
引き起こした。
この結果、多くの不動産会社が破綻したことから、銀行は莫大な不良債権を抱えることになった。これは銀行の経営を圧迫し、銀行は自己資本を守るために「貸し渋り」や「貸しはがし」を行った。これは不動産業以外の産業にも影響を与え、日本の実体経済が地盤沈下することになった。
これが日本のバブル崩壊で起こったことである。
<中国の現状は?>
実は、いま中国でもこれと似たことが起こっている。
2020年7月、地価高騰を抑制しようして中国の金融規制当局は、「3つの赤線」と呼ばれる政策を打ち出した。これは主に大手の不動産開発業者が、事業拡大のために銀行から融資を受けることを禁じた。
この政策の悪影響は2021年後半から現れ始め、不動産大手の「エバーグランデ・グループ」は請負業者への支払い、住宅の引き渡し、資産管理商品の購入者への返済に失敗した。「エバーグランデ」に続き、「カントリー・ガーデン」と「サナック・グループ」も外国の債券投資家への返済に失敗し、アメリカで破産法の適用を申請せざるを得なくなった。
中国の主要大手銀行の自己資本比率は30%を越えており、かなり高い。また、政府規制により不動産分野への融資は抑制されており、6%程度である。不動産会社の破綻で不良債権が増えたとしても、銀行の経営が厳しくなることはない。したがって、日本のバブル崩壊時のような状況にはならない可能性が高い。
しかしながら、現在の中国で不動産バブルをけん引してきたのは地方の「融資平台」と呼ばれる特殊な金融組織である。これは地方の省政府が作った機関で、銀行や投資家などから資金を募り、不動産業に融資をするための機関だ。「融資平台」が集めた融資の返済保証は省政府がする。もし省政府が支払い不能に陥ると、「融資平台」に投資をした銀行は不良債権を抱えることになる。
いま、バブルの崩壊で不動産開発に失敗した省政府は返済が困難になりつつあり、銀行も「融資平台」の不良債権を抱える可能性が高くなっている。その結果、中国でも「貸し渋り」や「貸しはがし」というバブル崩壊時の日本で典型的だった状況が現れ始めている。
これからもし返済不能になる省政府が増えると、中国でも日本のバブル崩壊時と同じように、銀行の経営悪化から実体経済に大きな影響が出てきてもおかしくない状況になるだろう。







