中国の経済の実態を報告する。中国経済は低迷しており、バブル崩壊後の日本のような長期の低迷になるとする報道が多い。実際にそうなる可能性があるのかどうかを検証する。意外な結果が出てきた。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
これから中国は日本のように停滞するのか?
これから中国経済が低迷し、日本が経験したような長期低迷に陥るかどうかを検証したい。
2023年は厳しい年であった。数年間続いたパンデミックが終結したと思ったら、今度は長期化するウクライナ戦争、それに伴うインフレの高止まりと高金利、突然と始まったガザ戦争などの出来事が相次ぎ、世界が不安定化した。こうした状況を見ると、2024年の世界がもっと不安定化し、予想できない事件や出来事が相次いで起こるのではないという予感を強く持つのは筆者だけではないだろう。
さまざまな出来事が懸念されているが、中でも注目されているのが中国経済の状況である。不動産バブルの破綻と個人消費の低迷に見舞われている中国は、1990年代のバブル崩壊後に似た長期の低迷に陥るのではないかと懸念されている。「日本化」の現象である。
中国の「日本化」を示す3つの兆候
「日本化」は、日本が1990年代前半のバブル崩壊後に経験した、長期にわたる低成長・低インフレの状態を指している。特に、中国経済は2022年末のゼロコロナ政策撤廃後、V字回復が期待されながらも春先には早くも回復が息切れしたが、その過程でみられた3つの要素が中国経済の「日本化」を連想させた。
<「日本化」の兆候その1:不動産不況>
第一に、不動産不況がこの間の中国経済を大きく下押しした。不動産価格高騰に対する人々の不満の高まりを受け、2020年夏以降、政府は不動産関連規制を強化し、価格の是正を試みた。その結果、不動産価格自体は小幅に下落したものの、住宅販売は大幅に減少した。不動産不況が景気低迷の主因となっていることは、日本の1990年代のバブル崩壊を想起させた。
<「日本化」の兆候その2:消費者・企業マインドの悪化>
そして第二に、最近の消費者・企業マインドの悪化である。マインドの悪化は、ゼロコロナ政策撤廃に伴う「リベンジ消費」の早い息切れを招き、企業の設備投資を抑制して景気を減速させた。そして、中国の消費者・企業マインドの悪化は、1990年代以降の日本でみられた社会の閉塞感と似ており、「日本化」の結果ではないかと指摘された。
<「日本化」の兆候その3:デフレ懸念>
第三に、デフレ懸念である。消費者物価は2023年1〜10月累計値で前年同期比+0.4%と低水準の伸びが続いているうえ、10月単月では前年同月比−0.2%と前年割れし、中国経済がデフレに陥るとの懸念が高まった。
こうした3つの短期的な要因は、少子高齢化による労働力人口の縮小という長期のトレンドと組合わさり、中国経済を一層低迷させるという予測も多い。
中国は人口抑制のために続けてきた一人っ子政策を止め、人口増加を許す政策に舵を切ったものの、出生率の低下には歯止めがかかっていない。中国の出生率は数十年間、1.6〜1.8で推移していた。それが、2018年には1.1という衝撃的な水準に低下した。ちなみに日本は1.3である。これは中国が日本と同じような少子高齢化社会になり、消費の低迷からデフレが常態化する可能性を示唆している。
こうした状況への懸念がある中、習近平政権は「アリババ」や「テンセント」などの中国大手のIT企業を2020年に取り締まったため、1兆ドル以上の外国資本が中国本土の株式市場から流出した。この額は今後も増える可能性が指摘されている。
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