急成長の期待は薄い
1人2,000万円の賃金を払ってもこれだけの利益を出せるのであれば良いという考え方もできますが、投資をして利益を出して、その利益をまた投資にまわして元手を増やしていけば、額としての利益が増えていくことは当然です。
一般の株式投資も同じで、配当利回りが同じ3%でも、100万円投資したら3万円ですが、1億円投資したら300万円になります。
利益が増えていくのは当然として、三菱商事の利益の増え方は必ずしも高くはなく、平均して3%ほどです。
レバレッジで2倍投資したとしても6%です。
直近の実績のROEは15%ほどありますが、それは資源価格が高騰しているからであって、これが下がってくると、過去の平均では6~8%の水準になります。
この水準は上場企業としては普通です。
今、株価は急上昇していますが、このまま上がり続けることはまずなく、資源価格の下落もあり得ますし、業績が急拡大することも考えにくいです。
“綺麗な”ビジネスは儲かるのか?
三菱商事は、「グリーン」と「DX」に力を入れていくと言っています。
この分野でこれまでの三菱商事の強みを活かしきれるか疑問があります。
風力発電のプラントに投資したりしていますが、グリーンエネルギーの収益性は未知数です。
社会的にイメージの良い“綺麗な”ビジネスに投資して儲かるのでしょうか。
これまでは、資源のプラントのような、過酷であまり綺麗なイメージじゃないところに大きく投資したからこそ儲かっている部分があると思います。
また、三菱商事に「DX」がやれるイメージも無いですし、たとえ優秀な人材であっても社内で異動を繰り返していては専門性が身に付かず、その分野で平均を上回ることは難しいでしょう。
今後、綺麗じゃない分野への投資を減らしていくとすると、儲かる種が無くなってしまうのではないかと思います。
今資源で儲かっているのは、十数年前の投資がようやく花開いたという状況であり、今新たな種を蒔いておかないと十年後どうなっているかということは疑問視せざるを得ません。
優れている点
三菱商事のビジネスは収益性が良くないのですが、一方で投下資本の理論でどんどん成長していることも確かです。
投下資本を増やしていくために最も重要なことは「失敗をしないこと」です。
バフェットも投資の原則としてこれを掲げています。
原則1:絶対に損をしないこと
原則2:原則1を忘れないこと
つまり、大事なことは博打して大きな成功をすることではなく、失敗しないことを続けることだということです。
投資ビジネスでは、収益性は変動しても、投下資本が増えている限りは利益は増えていきます。
しかし、何らかの要因で投下資本が大きく減ってしまうことがあると、継続的な成長はできなくなります。
よって、三菱商事の成功において最も重要なことは「失敗しないこと」となります。
その点では、三菱商事には失敗しない優秀なサラリーマンがそろっているので、結果的に三菱商事は強いということになります。
ここがバフェットが目を付けた理由なのではないかと思います。
三菱商事は失敗せず上手くやっていくだろうとは思いますが、上手くやっていくことと大きなリターンをもたらすことは別の話になります。
おそらく、今後持ち続けてもそこまで大きなリターンをもたらすことはないと思います。
今回、自己株式取得を行うことや配当を増やしていくという発表をしましたが、配当で払い出すということは投下資本の増加が疎かになってしまうことになります。
株主還元ばかりしていると、大して成功しないビジネスができあがってしまうので、その点には注意が必要です。
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