楽天に投資する4つの期待
はっきり言って、財務に問題を抱える会社に投資する理由はないと思うのですが、仮に今から投資する場合、どのようなことに期待できるかを考えてみます。
投資理由1の通り、株主優待がおトクなものになりました。
それは1年間楽天モバイルが無料で使える、という優待です。既存の楽天モバイルユーザにとっては、とても嬉しい変更です。新たに始まる家族向けサービスとも、シナジーがあるかもしれません。
しかし、今から投資してもすぐに優待がもらえるわけではなく、最短で25年からです。そもそも次回の基準日である、24年12月までこの優待が続くかは分かりません。すぐに優待がもらえると勘違いしないようにしましょう。
投資理由2の携帯事業の改善は、23年通期決算でその兆候がみられました。これがストップ高の最大の要因でしょう。以前に比べれば、黒字への道筋も見えてきました。
しかし、「コストをかけず、顧客を増やし、単価を上げる」という大きな矛盾を解消しなくてはいけません。まだまだトンネルは続いていきます。
投資理由3は、誰もが思うことでしょう。「楽天モバイルさえなければ…」です。
ECと金融事業だけを見れば、素晴らしい会社です。ここをモチベーションに投資されている人もいると思います。携帯事業からの完全撤退は、三木谷氏の一存とも言えます。とは言え、実現可能性は低いでしょう。そもそも赤字を垂れ流す携帯事業だけを欲しい企業など存在しないと考えます。
そして投資理由4のKDDIの買収は、ある意味突拍子もない話です。携帯事業だけでなく、楽天すべてを買収するアイデアです。
実は、auでんきなどのサービス強化やローソンの買収など、人々の暮らしに近づくKDDIからすると、実現可能性がまったくゼロとは言い切れないでしょう。モバイル事業を譲り受けても、既存の設備が整っていることから、大きな投資は必要ありません。
KDDIの心境は「楽天市場やフィンテックの優れたビジネスを、安く手にいれるために、できる限り消耗して欲しい」かもしれません。
とはいえ、これが実現すればスペシャルサプライズです。この期待を元に投資するには実現可能性が低く、リスクが高いでしょう。
まとめると、楽天は改善傾向があるものの、現実的にはかなり厳しい状態である、このように見えます。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2024年2月16日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。