楽天の23年12月期通期決算が発表され、株価は一時ストップ高になりました。今、かなり注目度が上がっています。今回は、楽天に何が起きているのか?携帯事業の未来はどうなるのか?現実的に投資するべきなのか? これらの疑問に答えていきます。ぜひ最後までご覧ください!(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
コストが抑えられ、赤字縮小
23年12月期の決算は、一言で表すと「最悪の状況は脱した」です。
22年は3,600億円の赤字でしたが、23年は2,100億円まで赤字が縮小しています。
出典:HYPER SBIより作成
その理由は銀行・証券・カードなどのフィンテックの売上が好調だったこと。
そして、モバイル事業のコストがやや改善したためです。
楽天は23年5月に「最強プラン」を打ち出しました。
以前の「UN-LIMIT Ⅶ」と決定的に違う点は楽天の通信が届かないエリアの扱いです。
UN-LIMIT Ⅶでは楽天の設備を通じた通信ができない場合、KDDI回線を使用し5GBまで使える、と制限されてました。
しかし、最強プランではKDDI回線のエリアでもデータ通信が使い放題になったのです。
これは楽天グループにとってはKDDIに対する支払い増加に繋がります。しかしコストの観点で自ら基地局を立てるよりはマシ、あるいは基地局整備が若干落ち着いた可能性があります。
そもそも、楽天が多額の投資を行って通信設備を整えてきた理由は、このローミング利用料が高いためです。しかし、自ら基地局を建て続けることによって、赤字が大幅に拡大。
この赤字に我慢できず、再度KDDIに助けを求め、自社の設備投資をやや弱めることでコストカットを実現しました。
出典:決算説明資料
結果的には「スタートに戻る」だったわけですが、何はともあれ赤字は縮小しています。
ここから、楽天が行うべきことはモバイルの売上を伸ばすことです。
「いかに契約者数を伸ばすか?」
「いかに顧客単価を上げるのか?」
この2つについて、詳しく見ていきましょう。
契約者をどうやって伸ばす?
楽天モバイルの契約者数の推移を確認します。
0円プランの終了により、契約者減少が起きましたが、23年は600万人に到達しました。その背景にはローミングによって品質が改善したこと、法人プランを開始したことが関係しています。
しかし、黒字化のためには少なくとも800万、目標は1,000万の契約者数を獲得する必要があるようです。これを実現するために、家族プランの新設や法人向けの強化を行う方針を打ち出しました。
とはいえ、最も根本的な問題は品質の改善です。
ローミングで多少改善されたとはいえ、「楽天モバイルは遅い、繋がりにくい」ことが問題です。「顧客増の為に品質を改善させたい。しかしコストはかけられない」非常に難しい状況です。