fbpx

「OWNDAYS」海外300店舗展開で大成功。JINSやZoffにはない強みとは?インド眼鏡大手との経営統合でさらなる躍進へ=山口伸

ファッション性の重視でJINSと差別化

とはいえ、店員のモチベーション向上だけでは売れない。商品面で田中氏が重視したのはメガネのファッション性である。

当初は安さだけを訴求していたため、中国製のメガネが数多く売れ残る状況も起きていた。ダサいイメージを払拭すべく、自らデザイン案をまとめて福井・鯖江のフレーム会社に持ち込み、新商品の開発を進めた。

現在、OWNDAYSは自社製品として様々なプライベートブランドを取り揃えているが、どれも個性的で似たような印象はない。質素なものからやや奇抜に見えるものもあり、店内はまるで様々な専門店ブランドが集まったメガネモールのような様子である。田中氏は「JINSがユニクロなら、OWNDAYSはZARA」と随所で主張している。

このようなファッション性重視の姿勢は、JINSとの差別化につながっていると考えられる。JINSも近年では高付加価値商品を投入しているが、安さ目当てで訪れる客が多く、ファッション性やトレンド性の印象は薄い。

JINSやZoffよりは凝った商品を買いたいが、パリミキほどはお金を出せない。そういった客層をOWNDAYSは取り込んでいるのではないだろうか。

JINSよりやや高めの中価格帯設定もブランド力を醸成しているだろう。廉価品より高い商品は消費者に品質の良さを印象付ける。現に国内の店舗数は2011年に100店舗を突破、コロナ禍で200店舗を達成し、現在に至る。出店先は主に商業施設や駅ビルであり、路面店は少ない。

田中氏個人による宣伝効果も大きい。特に17年から19年にかけて田中氏によるOWNDAYSの事業再生劇が注目され、メディアやSNS等で頻繁に取り上げられた。そもそも知らなかった人が知るきっかけにもなっているはずだ。

いち早い海外展開で事業を拡大

そしてOWNDAYSについて特筆すべきは、海外事業の成功である。

約300を数える海外店舗数は国内(257店舗)より多く、JINSの海外店舗数(約250)をも上回る。初の海外店はまだ債務超過を解消していない2013年にシンガポールで構えた。田中氏が旅行でシンガポールを訪れた際、現地のメガネ屋の様子を見て出店を決めたようだ。

現地ではメガネの販売に国家資格が必要であり、価格も高く、病院のような接客をする店舗が多い。JINSやOWNDAYSのように企画から店舗販売までを担うメガネのSPA(製造小売業)モデルは東南アジアでは珍しく、圧倒的な価格競争力で店舗数を増やした。日本と同じく追加料金ゼロのシンプルプライス制や素早い作成も人気の理由だ。ちなみにSPAは中間業者を省くことで最終価格を抑えられるモデルであり、他業態ではユニクロやニトリ、サイゼリヤなどが挙げられる。

海外店は2017年に100店舗を超え、2019年に200店舗を達成した。現在ではシンガポールのほか、タイ、マレーシア、インドネシアなど各国に進出し、インドやUAEにも出店している。

国内外の店舗数拡大もあってオンデーズの売上高は17年2月期に100億円を突破、20年2月期は220億円となり、報道によると直近の24年3月期は405億円となっている。

余談だが海外初出店を果たした直後、店舗数を増やそうとしたが債務超過を解消していないため銀行から融資を得るのが難しかったという。そこで、既に10店舗ほど展開していた沖縄に現地子会社を構え、同社を通じて沖縄振興開発金融公庫から融資を得た。事業機能をもつ株式会社オンデーズは東京に本社を構えるが、沖縄の現地子会社は持株会社として“格上げ”され、現在のOWNDAYS株式会社となっている。資金調達における柔軟な姿勢も、当初の事業再生に貢献したといえる。

Next: 海外事業が大成功。「破天荒」な成長は今後も続くか?

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー