「電動スーツケース」を大阪市内の歩道で無免許で使用したとして、中国人留学生が道路交通法違反の疑いで書類送検された。
報道によれば、書類送検されたのは、大阪市此花区に住む30代の中国人留学生。ことし3月に大阪市福島区の歩道で、電動スーツケースを無免許で使用していたとして、道路交通法違反の疑いが持たれているとのこと。
女性が乗っていた電動スーツケースはハンドルやアクセルが付いており、府警はミニバイクなどと同じ原動機付き自転車に当たると判断し、無免許運転を適用。ちなみに電動スーツケースの無免許運転による検挙は全国で初めてだという。
留学生は任意の事情聴取に対し「乗り物という認識がなく、運転免許が必要とは思っていなかった」と容疑を否認しているということだ。
市場に登場し数年後にようやく道交法での摘発に
いわゆる電動スーツケースの存在が、日本国内でも取沙汰されるようになったのは、今から2~3年前の話のよう。
代表的なモデルのスペックを見てみると、大きさ的にはだいたいSサイズのスーツケースと同じぐらいのようなのだが、容量は26Lと流石にバッテリーやモーターなどの付随物に結構な容量を持っていかれてしまう作りとなっており、その点は選ぶ側としてはかなりのマイナスポイントになりそうなところ。
しかしながら、スケールの大きい海外の空港のロビーなどの移動に便利だったり、あるいは上記のようなサイズということで、飛行機内や電車内への持ち込みも可能ということもあり、正直日本で売れていたかどうかは正直微妙なものの、新しもの好きといった層からは一定の注目を集める商品だったようだ。
いっぽうで、日本向けの販売サイトを見てみると、一応のところは「※日本国内では本品を公道や乗車禁止区域では使用できません。公共施設では事前に許可を取ったうえでご使用ください。」との一文が。
このように日本人向けには、国内で乗れそうな場所はごくごく限られており、ある意味で扱いがとてもめんどくさい乗り物である…といったニュアンスも伝わる注意喚起がなされているようなのだが、しかしながら今回検挙されたのは中国人留学生だったということ。
恐らくは、日本の道交法などまったく縁もゆかりもない場所やサイトで電動スーツケースを購入したうえで、それを日本に持ち込んで日本国内で何も知らず乗っていたところ、摘発されてしまったといった流れのようだ。
日本人にも増えている免許が必要なボードの無免許運転
2023年7月の改正道交法施行により、長さ190cm以下、幅60cm以下で、時速20キロを超える速度を出すことができない、などの要件を満たす電動キックボードを「特定小型原動機付き自転車(特定小型)」と定義し、16歳以上であれば免許なしで運転できるようになったわけだが、いっぽうでその法改正を機に電動キックボード絡みの交通事故は増加している状況。
利用者が増えれば事故も増えるというのはある意味では当然の流れとも言えそうなのだが、そのいっぽうで「交通ルールをよく知らずに乗っている例も散見される」「ボードの区分を含めて、交通ルールの啓発活動にも力を入れていきたい」との警察幹部のコメントもあるように、上記の「特定小型」に当たらず、免許が必要なボードを無免許で運転して摘発されるという事案も多いのだという。
確かに見た目は同じようなキックボードでも、公道走行に必要な保安部品を標準搭載し原付免許、もしくは原付二種免許があれば公道を走れるものもあれば、「特定小型」に対応したスペックで免許なしで公道を走れるもの。さらには機体が公道走行に対応しておらず、免許の有無に関係なく公道を走れないものなど、その種類は実に様々。
このように、日本人でもその違いがあやふやな者が少なからず存在するなかで、日本に来た外国人が日本の道交法を理解したうえで、公道で電動スーツケースには乗らないといった判断をするのは、土台無理な話といえそう。ましてや、時速20キロ以下とはいえソコソコのスピードが出る電動キックボードが、免許なしで乗れ公道も走れるといった日本の状況をみれば、それの約半分程度しかスピードが出ない電動スーツケースが免許が必要だと摘発されてしまうとは、まさか夢にも思わないだろう。
今回の摘発を受けて、電動スーツケースの販売を手掛ける関係者からは「懸念していたことが現実になった」との声があがるいっぽうで「電動スーツケースの道交法上の区分も明確になった」といった反応もあったよう。今回摘発された中国人留学生がまるで人身御供ということではないのだが、せめて今回の件が、免許の必要・不必要などといったボードの区分の周知のすこしでもきっかけとなることを祈るばかりである。
Next: 「思っていたより乗り物だった」