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EU離脱まったなし。米シンクタンク調査にみる英国民投票の「理想と現実」=矢口新

「盟主・ドイツ」という矛盾

理想と現実の矛盾、誰が欧州政府を動かしているかを示唆する実例を1つ挙げよう。ユーロ導入後の、独仏とPIIGS諸国の失業率の推移だ。

独仏とPIIGS諸国の失業率の推移

独仏とPIIGS諸国の失業率の推移

サブプライムショックのあった2007年まで最も失業率の高かったドイツが、2009年には最も低くなる。そして、その傾向は今も続いている。こういうことが起きたのは、私は、ECBがサブプライムショック後に利上げしたことが主因だと見ている。

この間、米英は急速に利下げしたため、住宅バブルが崩壊していたスペインやアイルランドは、景気後退期に利上げと、米英との金利差急拡大というダブルパンチを受けた。

ダブルパンチは他の諸国も同じだ。そして、(リーマンショックに加え)その結果の景気後退期に財政出動したフランスやPIIGS、その他の国の首長は総退陣させられ、代わった首長はEU政府主導の緊縮財政を受け入れた。トリプルパンチだ。

つまり、ユーロ圏の諸国は、自国の金融政策がないばかりか、財政政策も事実上ないのだ。

では、なぜECBは利上げしたのか、そのヒントが下の図にある。

ユーロ導入後のドイツ経済

ユーロ導入後のドイツ経済

ECBの母体である独ブンデスバンクは、インフレの番人として著名だった。ECBの利下げは、リーマンショックによりドイツ経済が落ち込んだ後からだったのだ。

これを穿った見方だと感じる人は、仮にG7が1つの政府になれば、G7すべての国民がより平和で、安全で、豊かになると理想を追う人だ。しかし、誰がG7政府を主導するのかと考えるのが現実的なのだ。

主導権を取る力がない国にとって、すべてを他国に委ねるのは、必ずしも理想的なことではない。理想と現実の狭間は、狭いようで、とてつもなく広い

EU支持の若年層は投票に行かない

英国の1973年生まれ以降のEU世代、若年層はEU残留を望んでいる。中高齢層は離脱を望んでいる。国民投票は今月23日だが、確実に投票すると答える若年層が半数以下なのに対し、中高齢層は7~8割が投票すると答えている。EUから離脱すればトリプルAから格下げする可能性を示唆したS&Pを始め、大勢は英国に残留を促しているが、さて、どうなることやら。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年6月12日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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