日本マクドナルドHDの事業改革
「食の安全」や「清潔さ」を失い、品質問題のどん底の中にあった日本マクドナルドは、まずは不採算店舗の整理を始めます。2015年は150店舗以上が閉店しました。表参道など、コストが高い一等地などもその対象になりました。
同時に、当時のCEOだったサラ・カサノバ氏(2013から2024年3月までCEOを担当)は従業員の給与を上げ、社員のモチベーションをあげようとしました。前CEOの原田泳幸氏はカウンターメニューの廃止など、効率性とコストカットを追求しましたが、異なる方針を取ったのです。
その後、メニューや店舗運営の観点でも様々な施策を打ち出します。
商品受け渡しシステムの変更や、コーヒーのリニューアル、季節性商品のスクラップアンドビルドなど、一般消費者から見ても分かるような改善が行われています。近年はモバイルオーダーを導入することで、注文や商品受け取りの行列が緩和されている傾向があります。
プロモーションの観点では、顧客から名前を募集する「名前募集バーガー」や、人気のハンバーガーを投票で決める「マクドナルド総選挙」など、顧客参加型の企画を打ち出すことで話題となりました。
一方で、出店戦略はフランチャイズを活用しています。直営店店舗をフランチャイズオーナーに受け渡すことで、中長期的に人件費や店舗投資などを抑制しています。
これらの施策を行うことで、営業利益は過去最高益を更新しているのです。
出典:日本マクドナルドHD 決算説明資料より作成
したがって、品質問題は乗り越えたと言えるでしょう。次は、マクドナルドの本質的な強みを考えていきます。
マクドナルドの強み
品質問題を乗り越えたその原動力を考えてみます。
それは世界中のマクドナルドが掲げる、マクドナルドの経営理念にあると思います。それは創業者のレイ・A・クロックが掲げた「QSC&V」という理念です。
出典:日本マクドナルドHD ホームページ
具体的な考え方を見てみましょう。
- 品質:世界中で同じ美味しさを維持するために、各国の品質管理担当者によって会議が行われ、基準の統一を図る
- サービス:“FUN PLACE TO GO” 「マクドナルドに行けば何か楽しいことがある」と感じていただける、子供達が喜ぶ心地よい空間作りを目指す
- 清潔さ:創業者レイ・A・クロックは、”Clean as you go” 「行くところすべてきれいに」と指導。店舗・厨房の清潔さを徹底して追究している
- 価値:品質、サービス、清潔が結びついたとき生まれるのが、さまざまな価値。それは、おいしいものを食べられる素敵な空間、くつろぎの場、いつ行っても楽しい場所、車に乗ったままで買えるドライブスルーという形で現れる
品質問題後は、食の安全さを見直すだけでなく、顧客の利便性や話題性を考えた施策を打ってきた印象があります。その背景には、QSC&Vの考えに基づいた「あるべきファーストフードの実現」によってなされたものと考えます。
経営の観点では、世界で多店舗展開するスケールメリットを活用し、良質な原材料を安く安定的に調達できることから、競合他社よりも低いコストを実現するコストリーダーシップの戦略をとっています。さらに、フランチャイズ展開によって商品やサービスが画一化されていることから、コストの優位性に拍車をかけ、営業利益率という形で優位性があると言えるでしょう。
出典:SPEEDAより作成
これらを踏まえて投資するべきか考えてみます。