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すんなり上がるわけがない。英国民投票で最初に試される東京市場=E氏

FRBの金融政策~Brexitだけではない、イエレンが追加利上げできない理由

初回利上げが決まったので、FRB政策の今後のポイントは利上げ回数と利上げ幅、そして債券回収時期です。本格的なマネー逆流はFRBの保有債券売却(市中からドル札を吸い上げる)でB/Sを削減し始める2017年以降ですが、利上げをするだけで対外ドル資産が米国に還流するので、米国以外の地域でのドルの過剰流動性は減少します。

リーマンショック以降長く続いた緩和政策を大きなショックなく引き締めに転じるために、FRBは文言を少しずつ変更し慎重に利上げに向けた地ならしを進めてきました。

ステップ1(~2014年11月)「相当な期間ゼロ金利を維持」
ステップ2(2014年12月~)「相当な期間」と「辛抱強くなれる」の併用
ステップ3(2015年1月~)「辛抱強くなれる」
ステップ4(2014年3月)「辛抱強くなれる」を削除
ステップ5 利上げが適切かどうかについて毎回議論(2015年5月から)
ステップ6 2015年12月16日のFOMCで利上げ決定
ステップ7 2回目の利上げ→2016年3月以降毎回議論

昨年12月FOMCで決定された初回利上げ幅は25bpsと想定通りでしたので、今は利上げペースと利上げ幅、今年末時点での金利水準がマーケットの期待値とどれだけ乖離しているかが重要になってきます。

その理由は、FRBは3ヶ月に一度FOMCメンバーの金利見通し(ドットチャート)を公表するのですが、マーケットは当事者の見通しを全く気にしないで暴走するためです。過去数年はFOMCの見方がハト派的に修正されていったので楽観的なマーケット参加者の見通しが正しかったですが、昨年12月は年内利上げを見込むFOMCメンバーに対しマーケットは直前まで来年3月以降の利上げを織り込んでいたために今年初頭の混乱が生じました。

昨年はハト派主体だったFOMCメンバーは、今年から一気にタカ派色が強まっています。

このため、利上げ後初となるドットチャートが出る3月FOMCはタカ派が増えたこともあり注目されていましたが、3月FOMCに続き先週15日のFOMCで発表された声明、経済見通し、ドットチャートともにハト派が加速した内容になりました。

今年末のFFレート見通しの最頻値は3月と同じ0.875%(12月の最頻値は1.375%)でしたが、メンバーの平均値は12月(1.287%)、3月(1.022%)、6月(0.831%)と大きく低下しています。

メンバーが予想する今年の利上げ回数は2回で変わっていないのですが、インフレ見通しを引き下げたことで、平均値が大きく下がってしまいました。

これは全員が弱気になったというより、5名程度が超弱気になったのに引きずられているためと思われます。

これを見ると分かるように、今年末のFFレート見通しで1%超えを見るメンバーが1名に減った一方で、0.6台という「1回しか利上げを想定しない見方」のメンバーが1名から5名になったことが原因です。最頻値の0.9%前後が利上げ回数2回の世界なので、6名のメンバーが「今年の利上げは1回で良い」と考えているということです。

今年3月からのマーケットは比較的落ち着いていましたし、昨年利上げを躊躇する理由にしていた原油安も歯止めがかかり、前年同期でプラス寄与をするまでになったというのに、たった3ヶ月で何か弱気になるようなことでもあったのでしょうか?

非常に重要なコメント

今回弱気になった理由で考えられるのは、Brexitの不透明感今月上旬の弱い雇用統計の2つしか出ていません。しかし、もしBrexitがリスクなら、以下のような表現をするでしょうか?

今後の金利見通しについては「緩やかな」ペースで上昇する可能性が高いとの見方をあらためて示しながらも、追加利上げの時期として次回7月やその他の特定時期には言及しなかった。イエレン議長も会見で、利上げ時期をめぐるガイダンスの提示を拒否した。

議長は「今後2会合と言えなくもないが、ためらわれる。たとえばの話だが、完全に順調なコースを歩んでいると確信させるようなデータが7月までに表れるようになるのは不可能ではない」と話した。

出典:FOMC:金利を維持、年内1回の利上げ予想は当局者6人に増加 – Bloomberg

このコメントは非常に重要です。というのも、今回利上げをしなかった理由にBrexitを挙げているのなら、7月の利上げの可能性をもっと主張して良いはずなのに、それすら言っていないからです。

Next: 米利上げ見通しは明らかに後退、「全くやる気がなさそうだ」

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