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すんなり上がるわけがない。英国民投票で最初に試される東京市場=E氏

欧州ECBの金融政策~「ユーロ瓦解リスク」にどう対応

今年1月のECB理事会後の会見でドラギ総裁が宣言したとおりに、3月上旬のECB理事会では追加緩和が決定されました。しかも、マーケットが期待していた国債買い入れ額増額がメインだったのでほぼ満額の回答です。

しかし、3月理事会合後の定例会見上でドラギECB総裁は利上げ打ち止めとも取れる発言をしてしまったことで、マーケットには「ECBの追加緩和打ち止め観測」が急速に台頭していましたが、実際、今月上旬に開催されたECB理事会は予想通りノーアクションでした。

6月ECBでは今年度インフレ率やGDP見通しを僅かですが上方修正していますので、当面の追加緩和はなさそうです。実際、先週出てきた要人発言も当面の追加緩和に消極的です。

これ以上マイナス金利を拡大させることは、やはりリスクが高いと考えているようです。とすると、残す手段は国債買い入れ増額しかありませんが、流動性の問題で買う国債がドイツ国債に偏重しているなど、日銀と同じジレンマを抱えています。なので、当面の追加緩和はないと思われます。

今、ECBの最大関心事は英国のEU離脱です。離脱で起きるショックが大きい場合は金融流動性供給などの緊急対策を施すでしょうが、多少の調整で済むのならば何もしない可能性が高いです。

英国が離脱した場合、スペイン等でも同様の動きが出ているため、「ユーロ瓦解リスク」が出てくるでしょうからユーロは暴落します。

先週木曜のコックス議員殺害以降、ユーロは反発していますが、23日の国民投票までは予断を許さないと思います。

従って、今週のECB絡みで重要になってくるのはBrexitになるかどうかです。離脱が決定的になったら、マーケットは暴落に近い動きになるでしょうが、ECBの対策が早い場合は、直ぐに戻す可能性もあるので、離脱になったからといって超弱気になるのは危険です。

日銀の金融政策~ノーアクション

散々追加緩和に消極的な発言を繰り返していた黒田氏が1月日銀政策決定会合で騙まし討ち的なマイナス金利を導入したせいで、このところ日銀や黒田日銀総裁にネガティブな見方が急速に増えてきました。

3月下旬以降の円高と熊本地震で政策発動期待は高まりましたが、日銀に対する期待感はなかなか出なかったことでも明らかです。しかし、4月日銀政策決定会合の1週間前にBloombergが「貸し出しへのマイナス金利導入を検討」という報道をしたことで、マーケットは想定外のアクションを避けるためにショートスクイズや期待が一気に高まったのです。

金を借りる人にマイナス金利という持参金を付けるという前代未聞のアイデアに驚愕したため、日銀政策決定会合前の1週間は日本株/円ともに考えられる限りのポジティブな期待感で相場形成されたのですが、私が「記事どおりでも材料出つくし、しょぼいアクションで失望を誘えば急落、何もなければ悲劇的な結末」と危惧したとおりの結果になってしまいました。

結局、黒田日銀総裁を始めとする委員は、Bloomberg報道以前の見方どおりの行動を取ったので、責められる筋合いは全くありません。悪いのはガセネタを流したBloombergと、勝手に期待したマーケットなのです。

しかし、肩透かしの結果、再度黒田氏に対する不信感が高まったのは事実です。このため、再び日銀が何を言ってもマーケットは信用しないし頼りにしなくなったと考えていましたが、先週の日銀政策決定会合後の反応を見ると、多少は期待していた可能性が高いです。

弱い雇用統計でドルが急落したのに、円がすぐに反落したり、先週前半の円高ペースが他通貨と同じ程度で緩かったわけですが、恐らく、緩和を期待していなかったらもっと急ピッチの円高が進行していた可能性が高いです。

先日の記事で書いたように、今回の結果が通常より早く出たのは、「ノーアクション」以外の選択肢がなかったからであり、これだけ円高が進展しているのに何も手を出せなかったのは、積極的な財政出動や金融緩和が通貨安政策と取られ米国から圧力が掛かっている可能性よりは、三菱がプライマリーディーラーを辞退することで、現行の日銀の緩和策が民間銀行の離反で遂行できなくなるリスクを懸念してのものだと思われます。

マイナス金利も、貸出へのマイナス金利適用も、民間銀行にとっては何のメリットもない以上、何も新味を出すことができないのです。

かといって、国債買い入れ増額は通貨安政策と取られる可能性が高いし、日銀が買いの過半を占める異常事態になっているので、今後は緊急時の持ち駒として温存したいでしょう。

そう考えると、マーケットが年初の下げのような暴落でもしない限り、日銀の次の手は出てこないと思われます。

以上から、今週の日米欧中央銀行絡みで重要なのは英国離脱決定を問う国民投票と、離脱が決まった場合のECBのアクションです。FOMCの要人発言は従来ほど気にしなくていいでしょうし、日銀もまた同様です。

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元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2016年6月20日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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