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粉飾疑惑で「オルツ」株価急落…個人投資家はどうすれば回避できた?地雷株の見分け方を解説=佐々木悠

高い評価を受けていたオルツ社:輝かしい実績の裏側

オルツ社は2014年に設立され、音声クローン生成などのAI研究を行ってきました。過去には、ジャフコ(2016年)やSBIインベストメント(2019年)といった有力なベンチャーキャピタルから多額の資金調達を行っており、ベンチャー企業としては高い評価を得ていたと考えられます。これだけの金額をベンチャーキャピタルから調達できたことは、評判の良い企業だった証拠かもしれません。

また、様々な権威ある表彰も受けています。

2017年には、EY Innovative Startupに選出。過去にはベースフードやスペースマーケットといった著名な企業も表彰されています。

2018年には、経済産業省のJ-Startupにも表彰。ここにはタイミー、スマートHR、Sansan、ビズリーチ、マネーフォワード、メルカリ、ユーグレナといった、多くの著名な上場企業や成長企業が含まれています。クラウドワークスやラクスルといった上場企業も選出されています。

これらの受賞歴は、オルツ社が高い評価を得ていた背景にあると見られています。しかし、このような輝かしい実績の裏で、実態が伴わない取引が行われていた可能性があるというのは、非常に大きな問題です。

なぜ粉飾の可能性は見抜けなかったのか?上場プロセスとチェック体制への疑問

オルツ社は、ベンチャーキャピタルからの出資、各種アワードでの受賞を経て、上場を果たしました。通常、IPO(新規上場)の際には、監査法人、主幹事証券会社、そして東証が厳しい審査を行うとされています。

しかし、今回のケースでは、なぜ粉飾の可能性が見抜けなかったのでしょうか。

【監査法人】
オルツ社の監査を担当したのは「監査法人指導」という会社でした。これは一般的にはあまり有名ではない中小監査法人という印象です。過去の実績も見てみると、上場企業の監査実績はありますが、担当社数は多くありません。中小監査法人を起用せざるを得なかった、あるいは起用した理由に何か問題があった可能性も指摘されています。デロイトとの業務提携もあったにも関わらず中小監査法人に至ったのは、何かやりたくない理由があったからかもしれない、という推測もされています。監査法人は書類を見ることはできますが、今回の件のように、実態(商品が使われているかなど)まで本当に見ていたかは疑問です。

【主幹事証券】
主幹事証券は大和証券でした。証券会社は通常、システムの実態(顧客が本当に使っているか)を確認するのは難しいという側面があります。書面やデータを信用するしかない部分もあるかもしれない、と考えられます。

【東証の上場審査】
東証の上場審査は厳しいと言われていますが、今回のオルツ社はなぜこれを通過できたのでしょうか。東証としては上場企業が多い方が利益になるという側面はあるものの、書類だけでなく、面談などで話を聞けば気づけたのではないでしょうか。J-StartupやEYのコンテスト受賞といった過去の評価が、審査におけるバイアスになった可能性も指摘されていますが、「じゃあ、しょうがない」ということにはなりません。権威ある賞を受賞しているからといって、審査を甘く見るべきではない、ということです。

今回、監視委が入ったのは、おそらく内部告発があったからではないかと言われています。もし内部告発があったとすれば、社員は実態を知っていた可能性があり、ベンチャーキャピタルや主幹事証券が社員としっかりコミュニケーションを取っていれば、早期に気づけたのではないか、とも言われています。企業の実態を知ることの難しさも同時に感じます。

また、オルツ社の元内部関係者と思われる人の声として、以前から「やばいこと」が頻繁に起きていた、社長が「やばい」という証言や、上場を遂げたことに驚き、見た目を取り繕うことにかかっていると感じていた、という声もあります。

決算説明資料のデザインが凝っているなど、投資家に見せる「見た目」のプレゼンがうまかった可能性はありますが、そこに騙されない見極めが重要です。プレゼンがうまいことで、コンテストやベンチャーキャピタルからの出資につながった可能性も考えられます。

Next: どうすればリスクを見抜ける?個人投資家が気をつけるべきこと

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