2025年6月25日に東証プライム市場へ新規上場する「北里コーポレーション」<368A>について、詳しく解説していきます。最近では珍しい、東証プライムへの直接上場案件であり、その注目度は非常に高い銘柄です。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
※編注:原稿執筆時点2025年6月24日
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
北里コーポレーション IPO概要:初値は2,001円、公開価格を49%上回る
まず、北里コーポレーションのIPO詳細から見ていきましょう。
- 上場日:2025年6月25日
- 最大売り出し株数:約1,600万株
- 1株あたりの想定売り出し価格:1,340円
- 想定時価総額:約536億円
公開価格から500億円を超える時価総額がつくのは、新規上場としてはかなり大きい規模と言えるでしょう。プライム市場への直接上場は条件が厳しいため、それだけ良い会社であることがうかがえます。

北里コーポレーション<368A> 1分足(SBI証券提供)
北里コーポレーションの歴史と事業のルーツ
北里コーポレーションは、創業当初から一貫して不妊治療に特化している企業です。 「北里」という社名を聞くと、北里柴三郎や北里病院を連想するかもしれませんが、実はそちらとは関係がないようです。
社名の由来は、会社が北側に富士山を望み、「私たちは里である」という、自然への敬意とスタート地点を意味する言葉から来ているとされています。
同社の始まりは、井上樹社長が2005年に不妊の研究開発を行う目的で「北里バイオファルマ」を創業したことにあります。その後、持ち株会社の設立や他の研究開発会社を立ち上げ、現在主力製品の一つである卵巣組織の凍結保存キットなどを手掛けてきました。
井上社長のキャリアは、もともと実の父親が経営していた「北里サプライ」に入社したことから始まっており、その当時から医療分野に関わっていました。実質的にはその流れを受け継いでおり、形を変えながらも創業当初から医療機器やキット製品を提供してきた会社と言えるでしょう。
高難易度不妊治療に特化!主力製品とその強み
北里コーポレーションは、一般的な不妊治療の中でも特に難易度が高いとされる体外受精や胚移植などの領域に焦点を当てています。
これらの治療で使われる製品が、同社の主要な売上を構成しています。
主な製品としては、以下の3つが挙げられます。
- 試薬:凍結保存時などに用いる。
- 凍結保存製品:卵子や精子、精巣組織の凍結保存時に用いる容器。
- 医療器具:卵子・精子などの採取、受精、移植に用いる器具。
これらの製品は、売上構成においてもバランスが良く、特定の製品に依存しているわけではありません。高度な不妊治療において、こうした精子や卵子の採取・移植には特殊な技術力が必要とされます。