ユーザーの「繋がらない」の声とプラチナバンドへの期待
実際のユーザーの声はどうでしょうか。X(旧Twitter)などで検索すると、「楽天モバイル、全然繋がらない」「室内や地下はダメ」といったネガティブな意見が多く見られるのが実情です。もちろん、良い意見は発信されにくい傾向がありますが、繋がりにくさへの不満は根強く存在します。
しかし、改善の兆しも見られます。通信品質の改善に伴い、解約率は2年前の2%から現在では1.5%程度にまで落ち着いてきています。また、プラチナバンドの提供が開始されており、これに適用した基地局が増えれば、室内や地下での繋がりやすさが改善する可能性があります。KDDIのローミング契約によって完全に繋がらない場所はカバーされても、楽天自身の電波が弱い場所での品質は課題として残るかもしれません。
ARPUは横ばい、価格戦略のジレンマ
売上が伸びている大きな要因の1つは、契約者数の増加ですが、月当たりの顧客単価である「ARPU(Average Revenue Per User)」は、ほぼ横ばいで推移しています。楽天が実施していた「0円プラン」が2022年第4四半期に完全に終了した後も、ARPUは1960円から2111円の間で、概ね2000円前後で推移しています。

そして、2025年5月時点で、ARPUの大幅な値上げの予定はないと公言されています。これは、楽天が当時の菅総理の肝いりで「携帯料金を安くする」という使命を掲げて第4のキャリアとして参入した経緯があるため、料金を大幅に引き上げることはその参入目的と矛盾してしまうという構造的な問題を抱えているからです。
楽天は値上げをしない理由として、AI活用や基地局の仮想化によるコスト削減を挙げています。しかし、現状では他社からも遜色ない低価格プランが出ており、ユーザーは「安くても繋がらない」回線では意味がないと考えています。
また、楽天モバイルの強みである「データ無制限プラン」も、大量のユーザーが使うことでトラフィックが集中し、回線速度が遅くなる「トラフィックの渋滞」という問題を引き起こす可能性があります。これが他社が無制限プランを避ける理由であり、楽天は「繋ぎ放題」という歌い文句を外せないため、このジレンマを抱えています。
<U-NEXTとの提携でARPU底上げを狙う>
ARPUの底上げを狙う新たな動きとして、2024年6月23日にはU-NEXTホールディングスとの業務提携が発表され、「楽天最強U-NEXTパック」が提供開始されました。これは楽天モバイルの無制限プランとU-NEXTのサブスクリプションを合わせて月額3,880円(税抜)で提供するもので、個別に契約するよりも990円安くなります。
このパックは、動画視聴を多くする層をターゲットに、データ無制限を活かしてU-NEXTを存分に利用してもらう狙いがあると考えられます。U-NEXTは国内のコンテンツ数や契約者シェアでトップクラスのサービスであり、楽天にとっては良い提携先と言えるでしょう。
ただし、投資家の視点から見ると、このパックを契約するよりも、楽天とU-NEXTそれぞれの株を保有し、株主優待を活用する方が賢い選択となる可能性も指摘されています。