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夏ボーナス21%増「ディスコ」株は買いか?投資リスクと成長余地を分析=澤田聖陽

日本経済新聞社による2025年夏ボーナス調査によると、半導体製造装置の「ディスコ<6146>」の支給額が最も大きく、前年比21.13%増の527万3,020円となった。これだけの高額のボーナスを支給できるディスコとはどんな会社なのか?(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2025年7月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。

半導体を切る・削る装置を作っている会社

ディスコの事業を一言で表すと、半導体を切る・削る装置を作っている会社ということになる。

半導体製造には前工程と後工程というプロセスがある。前工程とは半導体の基礎材料であるウエハーに回路を書き込む加工で、エッジングと呼ばれる。後工程とはエッジングされたウエハーを切り分けて組み立てる加工である。

この後工程でウエハーを切り分ける装置をダイサーといい、薄く削る装置をグラインダーという。ディスコはこのダイサーとグラインダーで7〜8割のシェアを有している。

半導体は前工程による微細化等によって性能を高めてきたが、前工程での性能向上には限界が見え始め、後工程の工夫によって性能を高めるようになってきている。

薄いウエハーを多層に重ねる積層化という技術であり、この積層化にディスコのダイサーとグラインダーが使われる。

生成AIの拡大でエヌビディアのGPU(Graphics Processing Unit)の需要が急増しているが、GPUに使われるHBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれる高速大容量メモリの需要も急増している。

HBMは薄く削ったウエハーを多層化して製造されるが、その製造にはディスコのダイサーとグラインダーは不可欠であり、ディスコは生成AIの拡大を裏から支えている会社と言えるだろう。

ディスコ<6146> 週足(SBI証券提供)

ディスコ<6146> 週足(SBI証券提供)

2025年3月期は売上・利益で過去最高も26年3月期第1Qは減益予想

ディスコの2025年3月期の決算数値は以下のとおりである。

売上:393,313百万円(前年同期比27.9%増)
営業利益:166,834百万円(前年同期比37.3%増)
経常利益:168,943百万円(前年同期比38.0%増)
親会社株主に帰属する当期純利益:123,891百万円(前年同期比47.1%増)

売上・利益ともに過去最高となった。利幅が大きい生成AIやパワー半導体向けの装置の出荷が拡大していることが好調の要因である。

この分野ではディスコの装置を使わざるを得なく、コンペティターも少なく値下げ圧力も受け難いので、高利益・高付加価値を維持しやすい。

同社は2025年3月期の決算発表と同時に2026年3月期第1四半期(第1Q)の予想数値を発表しているが、以下のとおり減収・減益予想となっている。

売上:75,000百万円(前年同期比▲9.4%減)
営業利益:23,800百万円(前年同期比▲28.7%減)
経常利益:23,800百万円(前年同期比▲29.2%減)
親会社株主に帰属する当期純利益:16,700百万円(前年同期比▲29.6%減)

第1Qが減益予想となっている要因は大きく2つある。

1つは為替である。為替予想を1ドル=135円と見積もっており、ディスコの取引は約6割をドル建て取引で行っており、1円の円高は約16億円の減益要因となる。

もう1つはEVの減速だ。EVに使うパワー半導体の製造はディスコの装置を使う大きな需要先だが、EVの減速によってパワー半導体の設備投資意欲が弱まっている。

ただし同社の売上については、出荷先の検収に左右されるので大きくぶれる性質がある。

トレンドを見るには売上よりも個別出荷額を見るべきであるが、同社が7月4日に発表した第1Qの個別出荷額は930億円と前年同期比で8.5%増、前四半期比で21.5%増となっている。

生成AI向けの出荷は引き続き高水準で推移しているようであり、第1Qは減収、減益予想であるが、トレンドは大きく変化しておらず、それほど心配する必要はなさそうだ(為替水準も7月8日現在、同社が発表している135円よりも10円以上円安の水準で推移している)。

Next: なぜボーナスが前年比21%増?他社が真似できないディスコの強み

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