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トランプ関税も追い風「トヨタ」株は今が買い?長期投資のプロが6つの視点で徹底分析=元村浩之

トヨタが「勝つ」のはどんな時?現実を見据えた強さ

トヨタが勝利を収めるのは、政策や世の中の動向が極端に振れないときだと言えます。

<ハイブリッド車への再評価>

EVには、価格、充電時間、航続距離、カーボンニュートラルといった多くの課題があります。そのような中で、トヨタのハイブリッド車は、現実的な解として最もエコで性能が良いと再評価されています。この状況が続く限り、最も良い車を作り続けるトヨタがじわじわと勝ち続けるでしょう。

<競合他社のEVシフトの失敗>

一時期、ヨーロッパでは「100%EV」といった極端な流れがありましたが、実際に蓋を開けてみるとそうはいかない現実が浮き彫りになりました。EVに振り切った欧州メーカーは、多くの問題に直面しています。また、中国政府主導でBYDのようなEVメーカーが台頭していますが、これも全世界で見れば、電気自動車が適さない場所や用途はまだ多く存在します。例えば、インドや東南アジア、アフリカのような新興国では、EVインフラの整備が難しく、先進国ですら完全なEV化は困難です。

EVに振り切った企業が、ガソリン車やハイブリッド車を再び生産することは極めて困難です。設計、必要な部品、製造概念が全く異なるため、簡単に方向転換できる領域ではないからです。ホンダが一時EVにほぼ振り切ると表明したことに対し、トヨタの現実的なアプローチは対照的だと言えるでしょう。

<影響力のあるロビー活動>

トヨタは全世界でロビー活動を行う力も持っています。ハイブリッド車が再評価される背景には、トヨタのこうした地道なロビー活動があったと考えられます。過去の米国でのリコール問題で苦労した経験が、こうした活動の重要性を認識させ、トヨタをより強くした側面もあるでしょう。綺麗ごとだけでは済まない部分ではありますが、失敗を経験し、そこから学んだことが生かされていると言えます。

トヨタが「負ける」ときは?現実離れしたシナリオ

トヨタが窮地に陥るのは、「イーロン・マスクが大統領になった時」のような、極端な状況が起こった場合だと考えられます。

イーロン・マスク、あるいは彼のような思想を持つ人物が政権を握り、「EVで全てをやるんだ」「技術は後からついてくる」といった極端な論調でEV推進を強めた場合、トヨタはすぐには対応できない可能性があります。現在、EVは日の目を浴びにくい状況ですが、この領域で最も進んでいるのはテスラであり、そのような政策が推進されれば、トヨタは不利になるでしょう。

ただし、このシナリオは限りなく実現可能性が低いと言えます。現在、イーロンマスクの人気は低く、選挙で勝つ見込みは薄いです。しかし、ポピュリズムが進む中で、何かのきっかけで再び注目が集まる可能性もゼロではありません。これは経済の側面からは予測が難しい、非常に特殊な状況と言えるでしょう。

トヨタの株価は「割安」なのか?相対的評価

結論から言えば、トヨタの株価は少なくとも“相対的に割安”であると言えるでしょう。

<割安感の根拠>

  1. 安定した業績と市場対応力
  2. 外部環境によって業績が左右される側面はあるものの、トヨタはあらゆる方向に転んだとしても対応できる「全方位戦略」を持ち、結果として常に「一番良い車」を作り続けています。

  3. 競合他社との比較
  4. ◦ トヨタのPERは現在11.9倍(PBRは1.03倍)
    ◦ 一方、米国のジェネラルモーターズ(GM)は約8.55倍、フォードは約9倍弱
    ◦ ホンダのPERは26.4倍だが、これは今期の最終利益予想が悲観的に見積もられているためで、その影響がなければ10倍から11倍程度になると試算されている
    トヨタの利益率が他社より高いにもかかわらず、PER自体は大きく変わらないか、むしろやや高めといった水準です。しかし、中長期的に見た勝ち筋はトヨタに分があることを踏まえると、業界内での相対的な割安感があると言えます。

  5. 高い配当利回り
  6. トヨタの配当利回りは3.34%と高く、魅力的な水準です。

  7. 株価の動向
  8. 直近の関税合意のニュースで株価は大きく上昇しましたが、それでも年初の水準よりもまだ低い位置にあります。PERも低水準であるため、今後シェアが拡大していくとすれば、割安感は依然として高いと言えるでしょう。

長期投資の可能性

自動車市場全体の販売台数が劇的に伸びにくい状況において、PERが低めに抑えられがちな傾向はありますが、その中でトヨタには現在、有利な追い風が吹いています。他の企業ほどPERが低くなくても良いのではないか、という見方もできるでしょう。

トヨタ自動車<7203> 週足(SBI証券提供)

トヨタ自動車<7203> 週足(SBI証券提供)

様々な見方はありますが、長期的な視点で見ると、現在のトヨタは非常に興味深い局面にあると言えます。


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image by:Tada Images / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年7月9日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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