2025年8月21日に行われた、イノテック株式会社個人投資家向けIRセミナーの内容を書き起こしでお伝えします。
事業変遷

棚橋祥紀氏(以下、棚橋):イノテック株式会社、代表取締役専務執行役員の棚橋です。本日はよろしくお願いします。
イノテックは、最終消費者に届くような製品を作っているわけではありません。また、そこまで大きな会社ではありませんが、事業も多岐にわたっており、わかりにくいと感じている方もいらっしゃるかと思いますので、なるべくわかりやすくご説明します。
事業変遷を少しだけお話しします。イノテックは輸入商社として、1987年に設立されました。具体的には、海外のいろいろなエレクトロニクス関係、特に、半導体に関わる製造装置や半導体を設計するためのソフトウェアなどを海外から輸入し、日本の半導体関連の企業に販売するところから始まっています。その後、電子部品やハードディスクなども取り扱うようになりました。
日本の半導体業界は、1990年代は非常に隆盛を誇っていましたが、その後、調子が悪くなってしまったため、我々のような業態がなかなか難しくなりました。商社の場合、規模を大きくしないと、なかなか利益を上げられません。しかしながら、電子部品やハードディスクに関しても、ある時期から、我々にとっては少し厳しくなってきました。
そのようなことから、我々は徐々に商社ビジネスから撤退していきました。スライド下部に記載があるように、自社製品や自社でサービスを行うソフトウェアを含めた事業を徐々に立ち上げていきました。また、M&Aで自社製品ビジネスを獲得するなど、業態をかなり変えてきたのが特徴です。
したがって現時点では、自社製品ビジネスの割合のほうがかなり多くなっています。東証の業種分類も、もともとは卸売でしたが、2022年10月に電気機器に変わりました。このように、業態がかなり変わっています。一方で、商社ビジネスも少し行っているため、商社とメーカーの両面を持っているというのが、我々の非常に大きな特徴になります。
事業内容:イノテックのビジネスとは

棚橋:イノテックのビジネスは大きく2つの分野に分かれています。半導体関連とシステム・サービスです。
半導体関連分野は、いわゆるデバイスとしての半導体設計のお手伝いをしたり、検査する機械を提供したりしています。しかしながら、我々独自の半導体を作っているわけではありません。半導体を作っている会社に、開発段階や検査の部分でのサービスを提供するのが、我々の大きなビジネスの1つです。
システム・サービス分野は、半導体そのものというよりは、もう少し最終製品に近いものが対象です。
自動車のほか、いろいろなエレクトロニクス製品を開発・製造するところに我々の技術を活用していただきます。あるいは、我々が開発をお手伝いしたり、我々の製品をお客さまの製品の一部に採用したりしていただき、より良いものにしていただくのがシステム・サービス分野の事業になります。
テストソリューション事業

棚橋:我々は、事業を3つのセグメントに分けて行っています。スライドはテストソリューション事業です。簡単にご説明すると、デバイスとしての半導体を検査する装置を我々が自社製品として作り、お客さまに提供する事業です。
スライド上部に記載のテストシステムは、イノテック本体で行っている事業で、我々が提供しているのは主にNAND型フラッシュメモリーという半導体です。
わかりやすく言うと、みなさまがお持ちのスマートフォンなどで動画や写真を記憶するための半導体です。こちらは、他にもいろいろな用途に使われています。我々は、メーカーが作った半導体を検査するための機械を作ってお客さまに提供しています。
また、デジタルカメラなどに使われる半導体のCMOSイメージセンサーの検査装置も作っています。我々の大きな特徴は、お客さまのニーズにぴったりと合ったものを作っているという点です。
テスターについても、大手の会社が非常に高度なものを作っていますが、我々と直接バッティングすることはありません。我々は、お客さまの求めている最小限の機能を備えた、わりと安価なテスターを製造して、トータルのテストコストを下げているのが特徴だからです。
スライド下部に記載の信頼性評価装置とプローブカードについてです。我々は、半導体のテスト事業を行っているSTAr Technologiesという台湾の企業を2014年に子会社化しました。この事業はそちらで行っています。
信頼性評価装置とプローブカードは、半導体のテストに使う機械です。スライドには大手ファウンドリ用と記載がありますが、STAr Technologiesのお客さまは全世界に存在しています。
台湾には大手企業がいくつかありますが、半導体を製造する会社と開発する会社に分かれています。そのうちの、半導体の製造を受託する会社を主なターゲットにして、いろいろなテストを行うための装置を提供しているのがSTAr Technologiesの事業になります。
半導体設計関連事業

棚橋:半導体設計関連事業です。スライド上部にEDA(半導体設計)ソフトウェアと記載がありますが、こちらは、事業変遷でご説明した商社ビジネスにあたり、創業当時から行っています。
EDAは、半導体の設計を自動化するソフトウェアです。我々は長い間、アメリカの大手EDAメーカーであるCadence社の国内代理店となっています。お客さまにソフトウェアを提供し、そのサポートを行うために、非常に多くのエンジニアを有しています。
お客さまに提供するソフトウェアを、2年や3年といった期間ライセンスというかたちで提供しているため、半導体関連事業のわりには、非常に安定的な売上が見込める事業です。
スライド下部に記載のある三栄ハイテックスおよびモーデックは、両方とも我々の子会社で、半導体設計関連のセグメントに属しています。
三栄ハイテックスでは、独自の半導体を設計しているわけではありませんが、お客さまが半導体を設計する際に、我々が一部を請け負う、あるいは技術者を開発現場に派遣するというビジネスを行っています。
モーデックについてです。いろいろな開発の場面において、実際の電子部品を使わずに、電子部品の電気特性を数式化して、シミュレーション上で、どんどん開発を進めていく方法がありますが、モーデックはそのためのシミュレーションモデルを作るという非常に特殊な会社になります。
つまり、トータルで半導体を設計している会社のお手伝いをしているのが、こちらのセグメントとなります。
システム・サービス事業

棚橋:システム・サービス事業です。こちらは、半導体そのものというよりは、もう少し最終製品に近いところで、我々がいろいろなかたちでお手伝いしています。それぞれ少し毛色の違った事業も含まれているため、一つひとつご説明します。
組込みシステムの事業については、イノテック本体で行っており、自社製品となります。CPUボードというのは、パソコンなどに使われている緑色の基板に、いろいろな半導体や電子部品が回路でつながっているものです。
スライドの写真にあるようなボックス型、筐体付きのものも含めてですが、要はコンピューターです。みなさまがお使いのパーソナルコンピュータやスマートフォンは、いろいろなソフトウェアをダウンロードすれば、いろいろな使い方ができる汎用コンピュータになります。
しかしながら、我々が提供するのは、非常に特定用途で使っていただくためのコンピュータです。
コンピュータは、券売機や行先表示板のような交通分野のほか、医療分野や産業機械分野など、いろいろなところで使われています。我々は、組込みシステムと呼ばれる産業用の特定用途のコンピュータを提供しています。
こちらは我々が自社で開発し、製造においても国内のEMSにお願いしているため、海外メーカーのもののほうが、若干、価格では優位です。しかし我々は、より信頼性を重視するお客さまにご評価いただいており、それが特徴でもあります。
次に、検証ツール/検証サービスです。スライドにはロゴの掲載のみとなっており、大変わかりづらいかもしれませんが、2014年に買収したガイオ・テクノロジーという子会社で行っている、自動車向けの組込みソフトの事業です。
自動車に関して、みなさまご承知かと思いますが、エンジンやトランスミッション、ブレーキなどがソフトウェアでコンピュータ制御されています。
ガイオ・テクノロジーは、ソフトウェアそのものを作っているわけではなく、開発されたソフトウェアを検証するツール、あるいは、そのようなツールを使った検証サービスそのものを提供しています。
我々が作っているツールは、ISO26262の安全規格等にも準拠しているため、非常に広く使われており、高い収益率を維持しています。
システム・サービス事業

棚橋:同じくシステム・サービス事業の中には、組込みソフト分野の会社である、アイティアクセスという子会社があります。こちらは、もともとブラウザなどを扱っている会社で、いろいろな機械のユーザーインターフェース部分に関するソフトウェアの開発が得意でした。
近年では、スライドにも記載があるように、クラウド決済システムが主力事業に成長しました。みなさまは、電子マネーやQRコードでいろいろなものをお買い物されると思いますが、我々はそのための決済システムを開発しました。
現在は、飲料メーカーの自動販売機で多く使われています。こちらの事業の売上が、アイティアクセスの売上の半分以上を占めており、非常に大きく伸びている事業になっています。
特徴としては、最初に申し上げたクラウドです。我々が参入する前の、従来の電子マネーによる決済は、端末側にいろいろな機能が凝縮されていました。我々が開発したものは、電子決済で買い物をした時に、クラウドというかたちで、ホストコンピュータのようなところと通信して決済が行われます。
端末側は非常に簡単なシステムで済むため、価格も抑えられ、ユーザーが非常に導入しやすくなります。また、通信のため、リアルタイムで売上の情報がわかります。さらに、不具合があった時も、もちろん、実際に出向かなければいけない場合もあるかもしれませんが、遠隔操作でソフトウェアの書き換えなどができるところが非常に評価されています。
最後に、2012年に買収したレグラスという子会社についてです。こちらの会社は、画像処理に関する技術者を多く有する会社です。
もともとは、カメラメーカーを含め、画像処理に関するビジネスを行っている会社で、いろいろな仕事を請け負っていました。我々が買収してからは、自社製AIカメラシステムを開発しました。
建設機械やフォークリフトを使うような作業の場など、非常に見えにくいところで作業をしている人物を検知し、危険な場合はしっかりとアラームを出すというカメラシステムで、現在、このビジネスが伸びてきています。
こちらのシステム・サービスセグメントを含めて、いくつかの企業は買収によって獲得した事業のため、商社ビジネスから徐々に自社の製品やサービスを増やしていこうということで、各ビジネスを立ち上げて、今、成長させているところです。
過去の業績推移

棚橋:最近の業績等を簡単に、おさらいしたいと思います。スライドは、直近5年分の売上と営業利益の推移です。売上高は、わりと順調に伸びてきています。
営業利益も、5年以上前までさかのぼると、10億円台前半だったものが、今は20億円近いところまで安定的に利益計上できるようになってきています。しかし、この3年ほどは十分に利益を伸ばせていないため、我々の今の課題となっています。
自社製品売上比率の推移

棚橋:自社製品の売上比率の推移です。冒頭から申し上げているとおり、我々は商社から自社製品のビジネスに変わっていったため、自社製品の比率が徐々に上がってきており、現在では7割方を占めています。
一方で、スライドグラフの緑色の部分が、いわゆる商社的なビジネスです。こちらが減り、自社製品の割合が増えているわけではなく、両方とも順調に増やしているということがおわかりいただけるかと思います。
ROEとROICの推移

棚橋:スライドのグラフは、後でご説明する中期経営計画などでも我々が重視している、ROEやROICといった資産や資本に対する収益率の推移です。
直近5年よりも前の段階では、もう少し利益水準が低かったということもあり、2015年から2017年と比べると、ROE、ROICといった指標が徐々に上昇してきています。ROEも、一度は10パーセントに乗りましたが、この3年ぐらいは少し利益が伸び悩んでいます。
2026年3月期 通期予想

棚橋:ただし、今期に関しては、再び20億円台後半の利益を目指せるだろうと考えており、ROEのような指標も、再び上昇に転じると我々は想定しています。具体的には、売上高435億円、営業利益26億円を目指していきます。
2026年3月期 通期予想のポイント

棚橋:先ほど、増益を目指せると申し上げましたが、その要因についてご説明します。この数年、利益が伸び悩んでいるとお伝えしましたが、この主な要因として、テストソリューション事業における国内のテスター需要が非常に厳しい状況にあったことが挙げられます。
現時点では、この状況はそう大きくは改善しないと我々は想定しています。もちろん、改善されれば非常にうれしいのですが、過度な期待はしていません。海外のメーカーに我々のテスターを買っていただける目処がだいぶ立ってきていることが、大きな増益の要因になると考えています。
また、半導体設計関連事業の中のEDAのビジネスは、数年間の契約で売上を徐々に計上していく期間ライセンスでの事業が中心になっているため、安定的に増収増益が今年も見込めるのではないかと考えています。
システム・サービス事業については、先ほどご説明したいくつかの事業は概ね順調に推移するだろうと考えていますが、少し慎重に見ているのが、ガイオ・テクノロジーの事業です。
ガイオ・テクノロジーは、去年も過去最高益を更新している会社ですが、自動車業界は、関税の影響を受けます。関税も落ち着いたという見方もあるかもしれませんが、自動車業界の会社は、やや慎重になっているというところも含めて、やはり我々も、ガイオ・テクノロジーの業績に関しては少し慎重な見方をしています。
そのようなことをトータルしても、営業利益26億円という数字を目指せる環境にあると考えています。
2026年3月期 事業別売上予想

棚橋:事業別売上予想については、数字が多いため、詳しいご説明は割愛し、一部についてご説明します。テスター事業は低迷していましたが、2026年3月期には倍程度の売上になると考えており、その要因が海外向けというかたちになっています。
STAr Technologiesの売上が減少すると予想していますが、去年の秋に一部事業を譲渡した影響によるものです。実は今、売上は減るけれども利益は増えるような計画を立てています。現状では計画どおりに進捗しているため、ご心配していただく必要はないかと思います。
先ほど申し上げたとおり、ガイオ・テクノロジーについては、少し減少するという見方をしています。
2026年3月期第1四半期 実績

棚橋:我々は、8月8日に第1四半期の決算発表をしました。内容をご覧いただいた方の中には、「大丈夫かな?」とお感じになった方もいらっしゃるかもしれません。スライドに記載のとおり、第1四半期の売上高は94億5,700万円、営業利益は2億3,400万円で、昨年の実績を下回っています。
通期で昨年よりもかなり大幅な増益を計画しているわりには、第1四半期の実績はそこまで増えていません。なぜなら、我々にとって毎年、第1四半期は、あまり大きな利益を計上できない期間となっているからです。
特に、STAr Technologiesが、毎年、第1四半期はある程度赤字を計上し、第2四半期以降に盛り返して黒字化するというパターンが続いています。そのため、第1四半期の利益が少なくなっていますが、いつものパターンだと申し上げてよいと考えています。
次に、昨年度と比べて減少している点についてご説明します。昨年度のテスターの売上は、我々にとっては小さい数字でしたが、実はそのうちの半分以上を第1四半期に計上しています。
第1四半期だけが少し良かったということではありませんが、年間としては、第1四半期で一気に売上を上げて、その後ずっと低迷してしまったという状況です。その第1四半期と今回を比べての数字になりますので、年間の計画に対してビハインドしているわけではありません。
半導体業界ですので、今後なにがあるかわからないところはもちろんありますが、現時点で当初の計画よりも悪いことが起こるということではないという点をご理解ください。
全社経営戦略 – 目指すべき姿

棚橋:今後の戦略について簡単にお話しします。我々は、イノテックという社名のとおり、「テクノロジーでイノベーションを起こすこと」を目指しています。
ただし、我々はもともと商社であるため、新しい技術を我々が生み出すというよりは、最先端の技術を利用して、お客さまにいろいろなソリューションを提供することが使命だと考えています。
そもそも商社から生まれた会社ということもあり、お客さまのニーズを的確に捉えて、それに対するソリューションを提供します。また、最適な部品、最適なソフトウェア、最適なサービスを提供します。そのことが我々の非常に大きな特徴になります。
スライドには、「『イノテックならでは』の付加価値の提供を目指す」と記載していますが、非常に汎用的な機能を提供するというよりは、我々にしかできない、あるいは我々だからこそできること、すなわちお客さまのニーズを捉えて、非常に特徴的な製品を提供することを目指して取り組んでいきます。そこに我々の存在意義があるということです。
中期経営計画(2024~2026年度)数値目標

棚橋:中期経営計画としては、収益性と成長性の両方を求めていこうと考えています。資産に対する収益性として、この数年で少し下がっているROEやROICを十分な水準まで持っていきます。
連結営業利益で過去最高益となったのが、商社ビジネスがまだ大きくあった2007年度でした。この中期経営計画期間にそちらを更新したいと考えています。
中期経営計画(2024~2026年度)グループ共通の事業戦略

棚橋:多岐にわたる我々の事業の中でも、共通して意識しているのがスライドに記載の3つになります。
1つ目は「営業利益率向上」です。当然ながら、収益性をどんどん上げていきます。資産に対する利益率を上げるためには、まずは売上高に対する利益率を上げていかなければいけません。
我々の自社製品は、簡単にいうとメーカー化しつつあるため、利益率を上げられる余地がもっとあるのではないかと考えています。
2つ目は「経営資源の再分配による事業ポートフォリオの最適化」です。事業を商社型からメーカー型に徐々に変えていく過程で、我々は非常に多くの事業を抱えています。したがって、何かから撤退することを決めているわけではありませんが、注力する分野をもう少ししっかりと決めて、成長のスピードを上げていきたいと考えています。
3つ目は「業績の安定性向上」です。我々は、半導体関連のビジネスを行っており、テスターのような装置も扱っているため、売上が上がる時期とそうでない時期がどうしても非常に極端になります。したがって、そのあたりを埋めていけるような、ストック型のビジネス等を増やしていこうと考えています。
中計事業戦略の進捗 ~テストソリューション事業~

棚橋:それぞれの事業における戦略の方向性についてご説明します。テストソリューション事業は、現状ではNAND型フラッシュメモリー向けにかなり依存しているところがあるため、製品ラインナップを拡充していきたいと考えています。
一方で、STAr Technologiesに関しては、ファウンドリといわれる半導体の製造を受託する会社向けのビジネスの収益性が非常に高くなっています。先ほど一部の事業を譲渡したとご説明しましたが、負担に関してはファウンドリ向けのビジネスに集中していこうと考えています。
このように、それぞれの事業に沿ったかたちで製品ポートフォリオを最適化していくことが今の戦略になっています。
次世代デバイス向けテスターの研究開発投資

棚橋:次世代デバイス向けテスターの研究開発投資についてです。スライドにMEMORYやCIS(CMOSイメージセンサー)について記載していますが、いろいろなかたちでのテスターの研究開発を進めていき、製品ラインナップを拡充していこうと考えています。
中計事業戦略の進捗 ~半導体設計関連事業~

棚橋:半導体設計関連事業です。主にEDA事業が売上の大きな部分を占めており、商社ビジネスで、そのツールを提供していくというビジネスになります。しかし、半導体設計を生業としている三栄ハイテックス等がグループ内にあるため、もう少し設計サービス寄りのビジネスも増やしていくことが、我々の付加価値を高める要因になっていくかと考えています。
したがって、半導体設計関連事業は、収益の基盤をしっかりと固め、安定した収益を出す事業として位置づけています。
中計事業戦略の進捗 ~システム・サービス事業~

棚橋:最後にシステム・サービス事業です。造語的な部分もありますが、スライドの一番下に「マスカスタマイゼーション&パーソナライゼーション」と記載しています。
我々はこの事業の中で、いろいろなお客さまにいろいろなソリューションを提供していきます。どちらかというと、カスタマイゼーション、つまりお客さまのニーズに合ったものを作っていくのですが、それをある程度マスマーケットに展開していけるようなものにしていきます。
そのようなかたちで収益性の向上、あるいは売上そのものの拡大を目指していきます。そしてそれらをどんどん増やしていき、成長の戦略としたいと考えています。
IT Access 決済端末システムの垂直展開と水平展開

棚橋:アイティアクセスの決済端末システムについてです。現在は、飲料メーカーの自動販売機向けで、ロケーションが比較的良く、自動販売機として売上が高いところで導入が進んでいます。しかし、もう少し安価なものを作り、ロケーションがあまり良くない場所でも導入を進めていきたいと考えています。
飲料の自動販売機以外の決済の場面でも使っていただけるよう、ある程度マスマーケットに対して訴求していけるような戦略を打っているところです。
財務戦略(2024-2026年度)成長戦略と株主還元を重視したキャピタルアロケーション

棚橋:中期経営計画期間での大まかなキャッシュフローの試算についてです。株主還元や既存ビジネスの設備投資に多くのお金を使っていきながら、新規成長投資も積極的に行っていきたいと考えています。
我々の今の財務体質を鑑みて新規成長投資に40億円程度を考えており、無理がない規模感であると考えています。
財務戦略(2024~2026年度) 株主還元(配当+自社株買い)

棚橋:財務戦略の中でも、みなさまは株主還元に興味があるかと思います。我々は基本的には配当性向50パーセント程度を目安にしています。もちろん50パーセントちょうどではなく、少し上下する可能性はありますが、あまり極端に減配・増配を繰り返すということではありません。
おおむね50パーセント程度を目安としようということです。それ以外で自社株の取得も行っていき、キャッシュフローをどのように株主還元に振り向けていくか、バランスを取っていこうと考えています。
財務戦略(2024~2026年度) 成長戦略と株主還元を重視したキャピタルアロケーション

棚橋:中期経営計画の初年度である2024年度に関しては、2024年度から2026年度のキャピタルアロケーションに対して、我々の予定よりも営業キャッシュフローが少ない結果となりました。
そのため、2年目、3年目は、しっかりと利益を出しながら、新規の成長投資枠にさらにお金を投入できるように取り組んでいきたいと考えています。
サステナビリティに関する取り組み

棚橋:サステナビリティに関する取り組みについてです。我々も当然ながらサステナビリティやESGなどを非常に意識しながら事業を進めています。
我々は設備を多く持っている会社ではないため、やはり一番重視しているのは人的資本経営です。そちらにさまざまな施策を打ち、しっかりと事業を発展させていけるように取り組んでいます。
そうは言っても、我々はもちろん気候変動への対応も気にしています。新横浜にある本社ビルの屋上には、ほぼ全面にソーラーパネルを設置しています。
企業としていろいろなかたちで地域に貢献していきたいと考えています。スライドの一番下にその例を記載しています。消防庁の依頼でいろいろな研修等に協力したり、我々はエレクトロニクスの会社ですので、近隣の小学生に向けてプログラミング教室を開催したりしています。このように地域に根づいた企業として地域貢献を長く継続していきます。このような取り組みを通じて企業価値向上を目指しています。
質疑応答:海外事業の地域別売上割合について
分林里佳氏(以下、分林):「海外事業の売上割合について、地域別に教えてください」というご質問です。
棚橋:冒頭でお話ししたとおり、我々は輸入商社だったということもあり、もともとのお客さまのほとんどが日本のお客さまです。
近年、我々も海外にお客さまを増やしていこうという戦略をとっていますが、まだまだ十分ではないと感じています。
現状では、連結の売上で海外事業が占める割合は3割程度です。ただ、我々イノテック本体が海外に輸出している部分もありますが、中心となっているのは台湾の子会社であるSTAr Technologiesの売上です。
STAr Technologiesは、台湾国内だけではなく比較的グローバルに商売をしており、先ほどお話しした売上における海外事業の占める割合である3割のうち、その半分、連結ベースで15パーセントぐらいが中国向けの売上になっています。
その他の地域では、台湾や韓国、シンガポールなどが数パーセントずつになっています。
質疑応答:テストソリューション事業の市場環境と対策について

分林:「テストソリューション事業について、メモリー向けテスターの需要回復にはいまだ時間を要するとのことですが、市場評価が待ってくれるのか疑問です。どのようにお考えですか?」というご質問です。
棚橋:今期の業績は、先ほどご説明したとおりで、今期も国内のテスターの需要は不透明感が継続するだろうと考えています。
我々も需要回復を待っているだけではありません。今期に関しては、海外での需要が我々の業績の回復をかなり担ってくれると考えています。
また、メモリー向けテスターのみならず、先ほど開発についてご説明したイメージセンサーや、メモリーの中でもNAND型フラッシュメモリーだけではなく、まだ時間はかかると思いますが、DRAMでも使っていただけるようなテストの開発も進めています。
このように、特定の半導体の市況に左右されないようなビジネスをどんどん育てていきたいと考えています。
質疑応答:テストソリューション事業の海外向け地域戦略と販売方針について
分林:「海外向けのテストソリューション事業について、地域戦略や今後の販売方針について教えてください」というご質問です。
棚橋:テストソリューション事業としては、我々の本体で行っているテスター事業と、台湾にあるSTAr Technologiesの事業があります。いずれにしても今後の海外戦略については、STAr Technologiesと我々の両方にとって、やはり中国が非常に重要になり、そこにチャンスがあると考えています。
実際に、STAr Technologiesの中国向けの売上は非常に伸びてきています。我々にとっても、日本のメーカー以外では、アメリカと中国の会社に売上実績が出てきていますが、中国のほうがより可能性があると見込んでおり、そちらに短期的にかなり注力していきたいと考えています。
質疑応答:配当と株主還元の方針について

分林:「今後の配当や株主還元についての方針があれば教えてください」というご質問です。
棚橋:配当に関しては、連結配当性向は30パーセントを下回らないこととしており、急激な業績変化等がなければ50パーセント程度を目安としています。配当自体を業績によって上下させるよりは、なるべく増配を少しずつでも続けていきたいという考えです。
利益が伸びないと増配はできないのですが、なるべく減配はしたくありません。もちろん確約はできませんが、なるべく減配はしない範囲で、50パーセント前後で配当していく予定です。
ただし、利益が大きく出たり、あるいは非常に特殊な要因で単年度でポンと利益が出てしまったりするような場面があるかもしれません。
そのような場合や、利益だけではなくキャッシュフロー自体が非常に潤沢になってきた場合に、株主還元という意味でいうと、自己株式の取得もコンスタントに行っていければ非常に良いのではと考えています。
配当に関してはおおむね安定的にしていきたいです。そのバッファーとして、自己株式取得を使っていきたいと思っています。
質疑応答:M&Aについて

分林:「2024年8月の説明会で、重要な事業戦略の1つとしてM&Aがあるという認識をうかがいました。当時40億円を投資枠として設定していたと思いますが、その後の予算の活用方法やM&Aの実績などをお聞きしたいです」というご質問です。
棚橋:中期経営計画の中で掲げているキャピタルアロケーションについて、キャッシュフローの振り向け先の目安のイメージをスライドに示しています。営業キャッシュフローがある程度あり、我々の財務体質でいえばまだ借入を増やせる余地がありますので、新規投資に40億円程度使っても特に大きな問題はありません。
もちろんそれ以上に投資する可能性もありますし、それ以下という可能性もあるかと考えていますが、現状この1年間だけでいうと、非常に大きなM&A等はまだ行っていません。
一方で、我々はこのような考え方を示していることもあり、いろいろなかたちでM&Aの案件をご紹介いただく機会があり、順次検討はしています。
我々のキャッシュフローをなるべく成長投資に使っていきたいという方針は現状でも変わっていません。
もちろんM&Aというものはなかなか思い通りにいかない部分もあります。M&A自体が目的ではなく、成長のための手段という面もあるため、「M&Aをこれだけ行う」というようなかたちで考えているわけではありません。しかしながら、重要な成長戦略として、今でも積極的に検討しているとお考えいただければと思います。
質疑応答:人材採用について
分林:「人材採用計画は順調でしょうか? 近年の採用では新卒・既卒だとどちらの割合が多いのでしょうか?」というご質問です。
棚橋:人材に関しては非常に売り手市場であり、人材確保が難しいです。特に我々は商社からメーカーに移ってきたということもあり、その上エレクトロニクス関連事業も半導体を中心に行っているため、理系の技術者を確保するのが非常に難しい状況にはあるのが事実です。
やはりイノテックというと、先ほどもご説明したとおり、東証の業種分類は電気機器に変えていただいきましたが、商社というイメージをお持ちの方もまだまだいらっしゃいます。そのようなことも含めて、理系の学生に興味を持っていただくのにいろいろと苦労しています。
一方で、近年各社がしていると思いますが、当社もインターンを今ちょうど行っています。学生たちに約2週間、長い方だと約1ヶ月来ていただき、いろいろな仕事を体験していただいて、イノテックの事業をわかってもらおうとしています。
この数年、特にこの1、2年は、我々が計画している採用人数のうち、かなりの部分を新卒で採用できています。理系の方に関しても、このような環境下ではありますが、幸い採用できています。
もちろん継続的に中途採用も行っています。我々はかなり特殊な技術を要するような事業も行っているため、経験豊富な社会人の採用もしています。この1、2年では、新卒・中途の両方ともそれなりに採っていますが、新卒のほうがおそらく少し多い割合になっていると思います。
質疑応答:為替変動の影響について
分林:「為替変動による業績への影響はどの程度ですか?」というご質問です。
棚橋:為替に関しては、いわゆる売上高あるいは営業利益に対する影響は、実はそれほどありません。日本からの輸出が多くはないため、ドルの売上もそれほど大きくないのです。
ただし、EDAのビジネスで、先ほどご説明した半導体の設計用のソフトウェアを、Cadenceというアメリカの会社から輸入して日本の会社に販売していますが、こちらのコストは当然ながらドルになります。実は売上もほとんどドルです。
日本の企業に契約していただいているのですが、米ドルベースでの契約がほとんどであるため、為替変動リスクはかなり抑えられています。
為替がどのように影響してくるかというと、例えばSTAr Technologiesでいうと、現地通貨で決算したものを日本円に換算して連結決算を作りますので、円安だと円がベースで少し大きくなるなど、その影響が少しあります。
さらに、我々がグループ内でSTAr Technologiesに貸付をしているため、そちらの為替の評価損益が出るというかたちで、営業外に為替差損益が出るケースがあります。ただし、基本的に売上高あるいは営業利益に対するインパクトは非常に小さいとみていただいていいかと考えています。
質疑応答:本社ビル売却の影響について
分林:「本社ビルの売却決定のプレスリリースがありましたが、決定の経緯と今後の経営に与える影響について見通しを教えてください」というご質問です。
棚橋:こちらは直近で公表したもので、今回のプレゼンにも間に合っていないような状況です。
経緯としては、ずっと検討していた部分ではありますが、先ほどお話ししたとおり、この数年、テスター事業が低迷したこともあり、ROEやROICが我々の想定している目標値に少し届かないような状態が続いていることが要因の1つです。
我々は工場を持っていないため、事業を行う上で「本社ビルがどうしても必要だ」というわけではないことは、ずっと認識していました。ただ、売却で得た資金等をどのように有効に活用していくかという面で、タイミングを見計らっていたところがありました。
ROE・ROICの改善のために、資産そのものをまずはいったん減らすことを先行していく必要があるだろうと考え、今回、売却方針を決定しました。
現状ではまだ売却額等も決まっていないため、具体的な活用方法や経営に対する影響について具体的にお話しできることはありません。
しかし、キャピタルアロケーションということでいうと、お金の使い道としては、やはり株主還元、加えて設備投資、新規の成長投資枠として設備投資も入りますがM&Aのようなイメージになると思います。そのようなところに有効的に活用していき、企業価値向上に少しでも資するような使い方をしていきたいと考えています。
質疑応答:エンゲージメント経営について
分林:「御社のエンゲージメント経営で一番力を入れていることは何ですか?」というご質問です。
棚橋:我々はエンゲージメントの調査を2年に1回ほど行っており、比較的良い結果は出ていますが、もちろん課題も非常に多く、調査で浮き彫りになってきています。
やはり働きやすさを重視していかなければいけないと感じています。時代もかなり変わってきていますし、当然女性も含めた非常に多くの社員たちに活躍していただきたいです。
そのためにどのような施策ができるのかについては、福利厚生そのものもそうですし、勤務形態なども比較的柔軟にしていきたいと考えており、重視しています。
非常に難しい課題だと感じているのは、どのように将来の目標やキャリアプランを描いてもらうかということです。その点に関しては、数年前まではあまりそのような研修などに力を入れていなかったのが正直なところですので、そのあたりをどんどん改善していきたいと考えています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:やはり、北海道や九州で今後需要が増えそうなのでしょうか?
回答:特定の企業さまとの取引関係についてお答えすることは差し控えますが、北海道や九州で進んでいる半導体関連の投資は、新たな需要が生まれる可能性があると期待しており、今後の動向を注視しています。
<質問2>
質問:自動車業界の業績変動が御社の業績に及ぼす影響についてお聞きしたいです。
回答:当社の子会社であるガイオ・テクノロジーは、売上の9割以上を自動車関連事業が占めており、自動車業界の動向が当社の業績に影響を及ぼすといえます。
現在、トランプ政権の通商政策に起因する相互関税の影響などにより、日系自動車業界には不透明感があり、ガイオ・テクノロジーの顧客である日系自動車メーカーの需要にも濃淡が生じています。これにより、ガイオ・テクノロジーの業績は、第2四半期以降も不透明感は拭えないと見ています。
<質問3>
質問:中国の景気冷え込みが現実味をおびてきました。マーケットとして規模が大きいとは思いますが、先行きはどうお考えでしょうか?
回答:中国の景気動向は、当社の業績に影響を与える重要な要素であると認識しています。現在のところ、米中関係やそれに伴う景気の影響については不透明な部分が残っており、今後の動向を明確にお伝えすることは難しい状況です。
一方で、このような状況下でも、中国の半導体メーカーが子会社のSTAr Technologiesからの購入を希望する動きが見られました。これは、関税リスクを回避し、安定したサプライチェーンを確保しようとする顧客の意図の表れと見ています。
今後も、市場の動向を注視し、柔軟に対応していくことで、リスクを最小限に抑えながら事業を拡大していきます。
<質問4>
質問:新規顧客開拓や既存顧客へのサービス拡充など、2024年度の成果を踏まえた次の一手は何でしょうか?
回答:テストソリューション事業については、主力である既存顧客向けNANDテスタ事業を維持しつつ、今後は中国を含む他NANDメーカーやCIS向けも注力していきます。また、DRAM向けテスタ開発も進めており、事業拡大を目指します。
半導体設計関連事業については、当社の強みであるEDA事業は、Cadenceが事業を拡大している基盤設計や最終製品分野で顧客層を広げます。さらに、子会社と連携し、設計サービス事業の強化も視野に入れています。
システム・サービス事業については、子会社のアイティアクセスの決済端末ビジネスは、飲料自動販売機に加え、無人店舗での活用を拡大していきます。また、子会社のガイオ・テクノロジーでは、人手不足に悩む自動車業界などで需要が高まっているシミュレーションを活用した開発手法の普及をさらに進めます。
<質問5>
質問:IoTやエッジコンピューティング分野への展開について、今後の注力度合い・開発ロードマップを教えてください。
回答:当社の組込システム事業は、防衛、インフラ、船舶向けを中心に、自社製のCPUボードやBOX型コンピュータの売上が好調に推移しており、第1四半期の業績は当社の想定を上回りました。この好調な事業環境は第2四半期以降も続くと見ており、これらの事業を強化していきます。
また、開発ロードマップについては、インテルやエッジコンピューティング分野向けの各社のロードマップを分析し、新しい組込みボードやエッジ顔認証ソリューションを開発しています。
