バフェット氏の投資タイミングと高金利下の新築需要
バフェット氏が米国住宅ビルダーに投資したことが明らかになったのは、2023年6月頃です。この時期、米国の30年固定住宅ローン金利は7%前後まで上昇しており、通常であれば住宅需要が冷え込む局面でした。しかし、住友林業を含め、米国の主要住宅ビルダーの業績は好調に推移しました。
その理由は、中古住宅の流通が滞ったためです。低金利時に住宅ローンを組んだ人々は、金利が高騰した状況で新たに借り換えや住み替えを行うことを躊躇しました。これにより、中古住宅の流通量が大幅に減少し、その分の需要が新築住宅市場に流れ込んだと考えられます。バフェット氏は、金利が引き下がれば、これまで購入を控えていた人々が一気に市場に戻ってくるという期待も持っていたのかもしれません。
投資が実行された2023年6月頃は、バフェット氏が投資した大手3社(レナー、DRホートン、NVR)の株価がPER10倍を切るような、非常に割安な水準でした。
なお、バークシャー・ハサウェイによる米国大手住宅ビルダー3社への投資総額は、日本円で約1,500億円と、バークシャー全体の投資比率の約0.4%に過ぎず、大型投資というよりはサテライト的な位置づけであると見られます。
米国市場での住友林業の立ち位置は?
住友林業は、2000年代半ばから米国の住宅ビルダーを買収し、積極的に規模を拡大してきました。現在、住友林業が買収した複数の米国住宅ビルダーを合計すると、米国国内で8位相当の規模に位置しています。米国の上位10社が住宅販売個数の約45%のシェアを占める中で、住友林業は比較的良いポジショニングを確立していると言えるでしょう。
このことから、住友林業の米国事業も、慢性的な住宅不足、マイホーム需要の増加、そして大手集約化という長期的な恩恵を享受していくことが期待されます。
住友林業の足元の業績と課題
しかし、住友林業の足元の状況は芳しくありません。2023年8月7日に発表された決算では、下方修正が行われました。
<足元の業績悪化>
2023年第2四半期累計では、受注個数・販売個数ともに前年同期を約10%以上下回りました。これに伴い、売上高は約10%弱、利益面では16%〜17%もの下方修正が発表されました。
この業績悪化の要因として、経済の先行き不透明感と住宅ローン金利の高止まりが挙げられています。
2年以上続く7%以上の高金利水準と、それに伴う新築住宅販売価格の上昇が、ついに新築住宅需要にも影響を及ぼし始めている現状があります。
<懸念される今後の影響>
機関投資家向けのQ&Aなどからは、以下のような問題が浮上しています。
- 住宅需要の先送り
- 値引き・金利負担の継続
- 在庫回転率の悪化
- 関税の影響
- 移民受け入れ制限の可能性
消費者が住宅購入を先延ばしする傾向が強まっています。
販売促進のために値引きや金利負担(レートバイダウン)を続ける必要があり、これが利益を圧迫しています。この状況の収束の目途が立たないことも課題です。
住宅が売れ残ることで在庫回転率が悪化し、維持管理費や借り入れに対する金利負担が増加する可能性があります。
木材や建材を輸入に頼る部分もあるため、関税が重なると現在価格が大きく上昇するリスクがあります。
米国では移民が住宅需要を支える側面がありますが、移民受け入れ制限の可能性も指摘されており、ミレニアル世代の住宅需要に悪影響を及ぼすかもしれません。
<配当予想の下方修正>
こうした状況を受けて、住友林業は配当予想も修正しました。当初年間1株あたり182円を予定していたものが、150円に下方修正されました。この150円という額は、住友林業が定めている配当の加減ラインの最低額にあたります。このことから、住友林業の内部では、金利が引き下がったとしても、すぐに市況が回復するわけではないという想定がされている可能性も考えられます。
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