fbpx

バフェットも注目?「住友林業」下方修正は買いの好機か。長期投資家が注視すべき米住宅市場の将来性=元村浩之

住友林業の将来的な見通しと積極的な戦略

足元の厳しい状況は認識しつつも、住友林業の将来的な見通しは、米国住宅市場の根本的な構造変化がない限り、依然としてポジティブな要素を多く含んでいます。

<構造的な追い風は継続>

  • 慢性的な住宅不足
  • 米国における住宅不足という事実や、人口増加に伴う需要の増加は中長期的に必ず発生すると考えられます。

  • 大手集約化の恩恵
  • 不況を乗り越えた先には、大手集約化がさらに進み、住友林業のような大手企業がより強固な地位を築くでしょう。

  • 金利引き下げによる需要回復
  • いずれ金利が引き下がれば、これまで購入を控えていた層が市場に戻ってくることは自然な流れです。

<積極的なM&A戦略とサプライチェーン強化>

住友林業は、このような中長期的な見通しを背景に、足元で積極的な手を打っています。

  • M&Aによる事業拡大
  • 2023年には集合住宅開発事業者のJPI社を取得し、今年に入ってからは米国の大手住宅ビルダーであるDRBグループへの出資を拡大しています。

  • サプライチェーンの強化
  • 大手製材会社も取得し、木材の輸入加工を自社で行うことで、外部環境の悪化に左右されにくい体制を構築しようとしています。

これは、不況期にこそ大手としての資金力を活かし、中・小規模の競合他社を買収・統合することでシェアを拡大していくという戦略であり、中長期的な強みをさらに確固たるものにする動きと言えるでしょう。

住友林業のバリュエーションと株価動向

住友林業の株価は、業績の成長と共に上昇してきましたが、足元では市況悪化の懸念が織り込まれ、ピーク時よりは下落しています。本記事執筆時点でのPER水準は11.1倍となっており、数字だけを見れば比較的に割安感があるようにも見えます。

しかし、8月7日の下方修正発表後も株価は持ち直しており、これはバリュエーションが極端に高くなかったことに加え、「バフェットプレミアム」、つまりバフェット氏が注目する市場でビジネスを展開していること自体が、株価を下支えしている側面もあるのかもしれません。

個人的な見解としては、今後さらなる業績下方修正の懸念は正直あるものの、バフェットプレミアムによる下支えや、中長期的な成長トレンドに乗る要素も持ち合わせていると考えられます。したがって、すでに株を保有している方にとって、慌てて売却する理由は見当たらないでしょう。

一方で、新規で購入を検討している方にとっては、現時点ではすぐに買う強い理由も見当たらない、というのが正直なところです。しかし、長期的な視点でじっくり構える投資であれば、決して悪い状況ではないと言えるでしょう。

参考までに、バフェット氏が投資した米国の主要住宅ビルダー3社(レナー、DRホートン、NVR)の株価も、業績ピーク時に上昇し、市況悪化で下落後、直近では反転し始めています。住友林業の株価も、これらの企業に連動する形で推移していると見られます。 PER水準を見ると、NVRが17倍、レナーが11倍、DRホートンが13.7倍であり、住友林業の11.1倍はこれらとほぼ同水準か、やや割安と言えます。また、配当利回りはレナーが1.51%、DRホートンが0.76%であるのに対し、住友林業は2.87%程度と相対的に高い水準にあります。

住友林業<1911> 週足(SBI証券提供)

住友林業<1911> 週足(SBI証券提供)

まとめ

住友林業は、ウォーレン・バフェット氏も注目する米国住宅市場において、慢性的な住宅不足、ミレニアル世代の需要増加、そして不況期に大手企業が強くなるという構造的な追い風を受けて成長してきました。しかし、足元では高金利や経済の不透明感を背景に業績に下方修正が生じ、短期的な逆風に直面しています。

それでも住友林業は、資金力を活かした積極的なM&Aやサプライチェーン強化を通じて、外部環境に左右されにくい体制とシェアの拡大を図っており、中長期的な成長戦略を着実に実行しています。株価はバフェットプレミアムによる下支えも期待できるため、短期的には不透明な部分があるものの、長期的な視点で見れば、米国住宅市場の構造的強みを享受し、さらなる発展が期待できる企業と言えるでしょう。


つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。またYouTubeでも企業分析ほか有益な情報を配信中です。ご興味をお持ちの方はぜひチャンネル登録して動画をご視聴ください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。

【関連】なぜバフェットは「守り」に入る?現在の株価は高すぎ?長期投資家が注視すべき市場のシグナル=栫井駿介

image by: BalkansCat / Shutterstock.com
1 2 3

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月4日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問

[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー