積水ハウスの株価評価と長期投資におけるリスク
現在の積水ハウスのバリュエーションは以下の通りです。
PER:9.7倍
PBR:1.1~1.2倍弱
配当利回り:4.16%
配当利回り4.16%は高配当の部類に入ります。国内事業が当面順調に推移するという見方を前提とすれば、高配当利回りが米国事業のネガティブリスクをカバーするという見方もできるでしょう。この点から見ると、積水ハウスは悪くない投資対象であると言えます。
しかし、長期投資を考える上で、以下のリスクも考慮する必要があります。
<国内事業のリスク>
- 金利上昇リスク
- 原材料コスト上昇リスク
- 中長期的な市場冷え込み
足元では金利上昇リスクが高まっており、戸建住宅や集合住宅の需要減少、開発事業の資金コスト増加につながる可能性があります。
建材コストの上昇は、価格転嫁を適切に行う必要性を生じさせます。
国内の高齢化と人口減少が進む限り、国内市場は中長期的に冷え込むという見方が強いです。
<海外事業のリスク>
- 米国住宅市場の不透明感
- 企業統合の難しさ
前述の通り、米国の金利動向や経済状況は依然として不透明です。
MDC社との企業文化統合が成功しなければ、期待された相乗効果は得られず、投資家からの評価に影響する可能性があります。
これらの国内・海外のリスクを乗り越え、特に海外事業で成果を出していかなければ、現在のバリュエーション水準から大きく向上していくことは難しいかもしれません。
まとめ:積水ハウスは「悪くない」が、海外事業の行方を注視
総じて、積水ハウスは盤石な国内事業基盤と高配当利回りを持つ「悪くない」企業という印象です。しかし、成長のカギを握る海外事業、特に米国MDC社との経営統合の行方には不透明感が高まっています。
この部分は、短期間で結論が出るものではなく、長い目でその動向を見守る必要があるでしょう。投資を検討する際は、国内事業の安定性に加え、海外事業が抱える課題と今後の成長戦略の進捗を継続的に注視していくことが重要です。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月13日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。