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高所恐怖症に苦しむ市場、1987年ブラックマンデーとの気になる類似点=斎藤満

長期金利上昇「本当の原因」

今回の長期金利上昇のきっかけは、市場が説明するボストン連銀のローゼングレン総裁のタカ派発言でも、原油価格の上昇でもないと思います。

FRB幹部によるタカ派発言は、彼以前にも何人からかなされていて、しかもまだFRBが一枚岩になっていないために、9月利上げの織り込みも進んでいません。しかし長期金利は直近2日で急上昇しています。

原油価格に至っては、水、木と上昇しましたが、金曜日には大きく反落しています。そのなかで、長期金利は急騰しました。

金利上昇の直接的な原因は、ECBの緩和行き詰まり露呈と、日銀の「副作用認識」ならびにイールドカーブの修正発言が効いているように見えます。これは29年前のドイツ金利の上昇より深刻な問題をはらんでいます。

つまり、今回の金利上昇は、人為的になされたものではなく、ECB、日銀の追加緩和に限界が意識されたことによるもので、政策当局としては如何ともしがたい面があり、その失望が、債券バブルを弾けさせる可能性を秘めているためです。

ECBはマイナス金利を限界と見、資産買い入れも現行スキームでは限界と言っているようなものです。つまり、今のECB法の下では、ECB預け金金利のマイナス0.4%より低い金利の債券は買えず、1銘柄のECB占有率は33%と上限を定めています。

このままではドイツ国債がいずれ33%の上限に達するので、資産の買い増しも、買い入れ期間の延長もできません。追加買い入れには、法改正が必要ですが、すぐにはできません。

この「緩和の限界」が露呈したため、欧州金利が上昇し、これが米国金利にも伝染しました。

そこへさらに、ロイター通信が日銀の桜井審議委員のコメントを紹介し、日銀がイールドカーブのフラット化による副作用を認識し、これを修正する可能性を紹介しました。日本でも、一時ゼロまで低下した20年債の利回りが0.4%台に大きく上昇しました。

Next: 裏切られた市場の期待。ブラックマンデー以来の嵐が近づいている

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