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メルケル独首相「ユーロ弱すぎ」発言が示唆する新たな上昇サイクル=児島康孝

なぜユーロ崩壊説が流れるのか

ユーロは、個別の国が景気の状況にあわせて為替レートの調整を行うことができません。この点、私は当初からユーロに懐疑的でした。案の定、不況とともにユーロ危機が起きました。

ドイツとギリシャが同じ通貨というのですから、それは無理があります。ギリシャの景気が悪くても、以前のように為替レートを切り下げたり利下げすることができません。

かくしてユーロは下落し、ユーロ崩壊かと物議をかもすこととなりました。このため、いわゆる「経済健全な国」のドイツは、非常に安い為替レートで、輸出産業が有利になっています。逆の言い方をしますと、ギリシャの零細な輸出業者と、ドイツの巨大な輸出企業が同じ為替レートということです。

ドイツはこの通貨安の恩恵を受けているのですが、最近のドイツでは、金融関係者やメルケル首相が「大ドイツ」的な発想?のように発言しています。

ユーロが安い」とか「ドイツマルクだったらもっと通貨は強いはず」とか、このような発言が目立ってきているのです。ナショナリズムを少し意識しているのでしょう。

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ユーロは中期的に上昇へ

私は、ユーロについては、過度の悲観も楽観もしていません。以前とは逆にユーロの崩壊がクローズアップされていますが、導入国のフィンランドなどの様子をみますと、ユーロはやはり非常に便利です。

周辺国に自由に移動できて、自由にユーロで買い物ができて、支払いがすべてユーロ表示なので簡単でわかりやすいです。あたり前のように隣の国に出かけて、観光したり、買い物をして帰ってくる。こういうことになっているのです。

また、欧州は観光立国が多いですから、域外(アメリカや日本など)からの観光客の誘致の面でも、ユーロには強みがあります。航空チケットや鉄道の利用でも、この国はこの通貨、あの国はあの通貨といった具合では、観光客は非常にめんどうです。ユーロなら、欧州周遊旅行でも欧州バックパッカー旅行でも、簡単です。これだけ実社会に流通していて、便利なわけです。

ですから、ユーロをやめるというのも考えにくく、私は「ユーロ崩壊説」にも懐疑的です。もうすっかり、ユーロは根付いているのです。

ちなみにユーロは、2017年の年央、つまり今年の6月頃から、上昇のサイクル(中期)に入るとみられます。これは、景気の回復がアメリカ→欧州という順番で起きるためで、景気回復に伴うユーロの上昇が見込まれるのです。最近のユーロドルの上昇は、これを先取りしたような動きでしょう。

ユーロ/米ドル 月足(SBI証券提供)

ユーロ/米ドル 月足(SBI証券提供)

超短期的には、ユーロの上昇過熱で、目先は調整するかもしれません。しかし中期的には、ユーロは景気回復に伴う上昇の時期にそろそろ来ているのです。

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年5月24日)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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