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EU堅持の防衛ライン「フランス・ドイツ同盟」に死角はあるか?=大前研一

フランスのマクロン大統領が、ドイツと手を取り合ってEUを守っていくことを表明しました。この二国が結びついている限りEUは大丈夫でしょうが、それでも前途は多難です。(『グローバルマネー・ジャーナル』大前研一)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年5月17日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※5月14日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

プロフィール:大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997~98)。UCLA総長教授(1997~)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。

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【フランス】エマニュエル・マクロン氏が大統領選に勝利

フランス大統領選の決戦投票が7日行われ、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン氏が勝利しました。得票率は66.1%で、ルペン氏を大きく上回る過去3番目の大差となりましたが、投票率は74.6%と1969年以来の低水準で、投票を棄権したか無効票を投じた有権者も全体の3分の1に上ったということです。

マクロン氏はフランス歴史上最年少の大統領ということですが、その奥さんはもしかしたら最高齢かもしれない64歳という変わり種です。歴史上、その次に若い大統領は40歳で、なんとナポレオン3世とずいぶん昔のことになります。今回、マクロン氏が選ばれるという事はなかなか想像がつきませんでした。二大政党がぶっ飛んでしまい、政党としては国民戦線と、このマクロン氏個人の戦いとなりました。

マクロン氏と小池都知事の「共通項」

そして、今度はフランス総選挙があります。マクロン氏はそこに候補者を立てなければなりません。これまで政党がなかったわけなので、東京都の小池氏の都民ファーストの会と同じように、これからその政党を作ることになります。

その政党の名前がなんと共和国前進党、前進する共和国というものです。全国で577の選挙区がありますが、そのうちの428の選挙区で、一部に政治家はいるものの、ほとんど素人が候補者となっています。その内もっとも有名な人はフィールズ賞をとった40代の数学者です。しかも428の選挙区に男性と女性を同数出しています。これが与党になるマクロン氏の共和国前進党です。これがどの程度票を伸ばすのか注目されています。

フランス国民はしらけ気味、それでも当面EUは安泰か

ただ、多くの国民は実はしらけてしまっています。つまりルペン氏には票を入れたくないという人がマクロン氏側にいっただけで、投票しない人や白票を投じた人も多かったのです。結局自分たちで選んでおきながら、マクロン氏は何なのか、実はあまり知られていないということなのです。これから先フランスは支持者がいないという前途多難な状況に陥ってしまうのです。

そんな中、私が個人的に非常に嬉しいと思うのは、ドイツと結ぶということです。ドイツと手を取り合ってEUを守っていくということをはっきりと表明し、メルケル首相も大喜びで、この二国ががっちり結びついている限りEUは大丈夫だろうと思われます。しかしながら、フランスはものすごく官僚が強い国で、自由主義経済とは程遠いところもあります。これから先、経済を建て直していくことはかなり大変だろうと思います。

オランド政権は今になってみると停滞の5年だと言われ、かなりマイナスに評価されています。マクロン氏がいかにビジネス経験があると言っても、予算には限りがあり、巨大予算を組むわけにもいかないでしょう。それによりドイツとの仲が悪くなることも考えられ、前途は多難だろうと思います。

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また、地域別の国民戦線への投票率の推移を見ると、1995年にルペン氏のお父さんが出てきた頃は、5%から9%の地域が多く、20%以上の地域は少なかったわけです。それが2007年には一旦後退したものの、近年次第に拡大してきています。こうした極右思想の国民戦線は今回ものすごく活躍し、決選投票にも残るという危ういところまで来たわけです。

「失意のどん底」ルペン氏はどう動く?

一方、ルペン氏は今回の選挙で駄目だったという失望感が非常に大きいらしく、今度の総選挙に出ない可能性もあるらしいのです。今は失意のどん底で選挙にも出ないとなると、彼女を継ぐ人はいないのです。そうなると、私はもちろん危ない政党だと思っていますが、せっかくここまで伸びてきて、今後どうなってしまうのか、最後にひっくり返ることになるのかもしれません。

ただ、今回の敗因の1つはテレビ討論です。テレビ討論でルペン氏はあまりにも常識がないということが明らかになりました。一方のマクロン氏は、その意味では経済的なところで非常に常識があり、通貨ユーロの問題などでルペン氏はかなり馬脚を現してしまったわけです。

またBREXITの議論もありましたが、ルペン氏は「イギリスはEUを離脱した」と過去形で語っていて、まだ離脱の申し入れをしただけで離脱していないと指摘されると戸惑いを見せるなど、ずいぶんと基本的なことを言っているにも関わらず、最低限のことも理解していないのかという点がテレビ討論で見受けられました。大統領になるにはやや危ういと思われたのです。

大統領になるとトランプ的になってしまうということで急激に人気が失墜したわけなのです。その点、マクロン氏はしっかりしているので大丈夫と思いますが、いずれにしても国民戦線が広がってきているフランスの構造的な動きというものは無視できないと言えるでしょう。

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