租税回避商品にデメリットはあるのか
ある資産家が子供を対象に15年満期で5,000万円の生命保険に入ったとします。6年目にこの資産家が死亡してしまいました。保険の加入期間は6年だけであり、全体4割です。だから、5,000万円のうちの4割、2,000万円は、保険の掛け金としてカウントされるのです。
解約返戻金はほとんどありませんので、この掛け金の2,000万円は相続財産としてカウントされません。が、前納した残りの3,000万円は、保険の掛け金ではなく、前払いの財産ということになり、相続税の対象となってしまうのです。つまり、保険に入って早い時期に死んでしまうと、あまり相続税の節税にはならない、ということです。
が、この例の場合、15年目の満期が来る直前に死亡すれば、5,000万円がまるまる生命保険の掛け金として扱われ、解約返戻金がほとんどないので、相続財産としてはゼロに近い評価がされます。つまり、5,000万円分の相続税対象財産を消すことができるのです。
この租税回避商品の欠点は、節税になる期間が非常に短い事です。加入してすぐのときには、保険の未経過期間が長く、前納した掛け金は、「保険の掛け金」ではなく単なる「前払い金」とみなされるので、資産を小さくすることはあまりできません。満期が来る直前には、90%以上の資産が目減りできる高パフォーマンスを持っていますが、満期が来れば返戻金は満額になってしまいますので、フリダシに戻ることになります。
つまりは、満期がくる前の5年間くらいで死亡すれば、かなりの効率的な相続税対策になりますが、それ以外の10年間で死亡したり、もしくは15年の間に死亡しなかったりすれば、相続税対策としての効果はあまりありません。また前納した後、急にお金に困っても、満期が来るまでは解約返戻金はゼロに近いので、途中で引き出すというようなことはできません。そういうデメリットもあります。法の抜け穴を衝いているわけなので、いろいろと不都合もあるわけです。
『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』(2016年10月15日号)より
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元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授。「正しい税務調査の受け方」や「最新の税金情報」なども掲載。主の著書「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)