今回の円安ドル高は、日本政府が米国債を購入した可能性が高いと踏んでいます。為替の動きから考えれば約10円の円安。50兆円分の米国債の購入をすでに行った可能性があります。
とはいえ、為替相場の行方を予想するのが難しい以上、株式投資家は、「円でもドルでも稼げる企業」を保有しておくことがベストではないでしょうか?本来は円高でも儲かるけれど、円安でも儲けることができる株――それは、ずばりニトリ<9843>でしょう。(『バフェットの眼(有料版)』八木翼)
為替相場の行方がわからない今、円安でも円高でも稼げる株を狙え
トランプ期待?米国債不安?
「民間企業から資金を集める」というトランプ氏の声が高まっているのですが、結局のところ、米政府が税金をほぼ払うことになるので、やはり米政府は、国債発行が必須です。
米政府の債務は現在、20兆ドルあります。2016年は0.8兆円の財政赤字でした。もしトランプの発案通り、1兆ドルのインフラ投資を続けるというのであれば、1.8兆ドルの赤字です。さらに金利が高まれば、資金調達は至難の業となります。なぜなら、金利の支払いだけで、財政赤字が増加してしまうためです。
実のところ、最近の米国債は人気がありません。米国債を買ってくれそうな国々はただいま絶不調です。
- 石油産出国:石油価格下落で経常赤字。むしろ国債を買ってもらいたい
- EU:ドイツ銀行、イタリア銀行救済でドルを買う余裕はない
- 中国:元を売る富裕層が多くなり、むしろ元買いが必要
そうなってくると、候補は財政ファイナンスをしている日本くらいです。今後、トランプ政権の骨子が明らかになるにつれ、円安は進む可能性があります。
為替レートは「政治」で決まる
トランプが選挙で当選したという一報が出た時、市場は一時、確かに円高になりました。確かに数式上で考えてみれば、米国の金利が上昇する理由は、実は乏しいのです。トランプの当選によって、本来ではインフレ期待が高まり、市場はドル安に進むはずです。
インフレ期待=潜在成長率↑(トランプ) + 予想インフレ率↑(トランプ)+ リスクプレミアム↑(トランプ) – 名目金利↑(イエレンのせいで)
もちろん、イエレンが名目金利を上げますが、それはあくまで後追いの性格が強いのです。米国と日本の市場という効率的な市場において、米国通貨が上昇するとともに、金利が上昇するというのは非常に起こりにくい現象なのです。
ではなぜ、ドル高円安になったのでしょうか?どこかで誰かのパワープレーが働いていることは間違いないでしょう。1円の円安には、約5兆円のドル買いが必要です。
平成27年度の経常収支は、約16.4兆円の黒字ですので、毎年、3円の円高圧力はかかっていますが、トランプ政権で180兆円の円安圧力がかかれば、約36円分の円安圧力がかかります。
もちろん、トランプの債務を全て負担することはないとは思いますが、FRBもイエレンが議長である1年半の間は協力的でなく、今、資金を提供できるのは日本のみではないでしょうか?
そう考えると、トランプ大統領の求めに応じて、円安はまだまだ進む可能性が高いのです。もちろん、トランプ大統領が、他国から資金調達したり、日本政府が「さすがにちょっと…」と、出し渋る可能性もあります。
今回の円安ドル高は、日本政府が米国債を購入した可能性が高いと踏んでいます。為替の動きから考えれば、約10円の円安。50兆円分の米国債の購入を、すでに行った可能性があります。
為替は非常に大きな市場です。影響力が大きいのは、国家間取引でしょう。元の子もないことを言いますと、円高に動くか、円安に動くのか今は分からないと答えるのが正解だと思います。
もちろん、市場に任せれば円高になると考えますが、どうも政治の力でそうはいかないようにも思います。今回、多くのアナリストの方が、予想を外した背景には、市場を過信し、政治の力を見誤ったことにあるのだと考えます。