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官僚だけが大儲け。日本を破壊する「水道民営化」のトリックに騙されるな=田中優

自治体が助長する「水の無駄使い」

現に、今なおダムがあちこちに造られようとしている。その水を消費するはずの人口が減っているのに。しかも節水型の装置のおかげで水消費量はどんどん減っている

かつての水需要の大きな部分を占めていた水洗トイレの水消費はどんどん減り、いまではかつての5分の1ほどの水しか使わなくなった。食器洗浄機の水消費量は、手洗いするより消費量が少なくなった

需要と供給があるとき、ダムを造って供給量を増やすことばかり考えるが、水需要そのものを減らすべきなのだ。この誤算の結果を水道料金だけに反映させるから、単位当たりの水道料金が高くなるのだ。

かつては産業の消費する莫大な水に対する料金にも、「使えば使うほど高くなる」逓増制の料金制度を課していた。すると事業者は高くなる料金を嫌って、水を再利用できる仕組みにしたり、海外に逃げたりして消費量を減らした。それによって水消費量は激減した。

すると需要が減って困った自治体は、料金を逆に「消費量が多いと安くなる」逓減制に変えたりしている。これによって水の無駄遣いが増えているのが現状なのだ。

水道民営化で元水道官僚たちが大儲け

水道料金の算定式は、電力で批判されたのと同じ「総括原価方式」を採っている。かかった費用はすべて料金に上乗せして、適正な報酬額を含めて料金から取っていい仕組みなのだ。そのせいでとめどないダム建設ラッシュと、料金の値上がりが続くのだ。かけた費用は利益率を上乗せして料金に反映できるのだから。

電気はこの「総括原価方式」を2020年には廃止することにした。ところが水道ではそのまま「総括原価方式」が維持され、さらに民営化で元水道官僚たちによる民営会社が仕事を受けようとしている。これでは「ゴミにたかる害虫」を増やすことと同じだ。民営化の前にすべきことをすれば、支出は不要になるからだ。

すべきことはまず人口推定に見合った「水需要」を正しく想定し、正当な水需要に合わせた水供給プランを作り直すことだ。これまで聖域のようにされていた「水利権」を実際の農業用水の必要量に合わせて見直し、余剰分を有料で水道供給用に転流できるようにする

するとダムの新規建設は不要になるから、不要不急のダム建設は中止できる。水道料金の前提になる「総括原価」も下がるので、水道管路の更新以外には原価自体も下げられる。それに沿って料金を改定していき、どうしても料金が上げざるを得ないときには、職員1人当たりの供給水量から見て、人件費その他の費用が高すぎるならば民営化も考えなければならないだろう。

それを最初から民営化ありきにしたのでは、問題をさらにこじらせることになる。

Next: 「民営化で水道料金が安くなる」ことなどあり得ない

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