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官僚だけが大儲け。日本を破壊する「水道民営化」のトリックに騙されるな=田中優

日本は世界の流れに逆行している

しかし本当に必要なのは解決策を考えることなのだ。民営化すると、民間企業には利潤余分な報酬が必要になる。つまり水道料金を高くする可能性が高い

実際に水道事業を民営化した国の後の事態を調査してみればいい。なんと水質が悪化した上に料金が高くなり、貧しい人は水が得られなくなって、人権問題を生じている例が多いのだ。その結果、「再公営化(再度公営事業に戻すこと)」をせざるを得なくなった事例が多く見受けられる。

世界でのトレンドは「再公営化」なのだ。しかも契約解除に伴って違約金を払わさせられる例も多い。そんなときに日本は遅れて出てきて、民営化しようとするのだ。

日本の水道事業が赤字になる本当の理由

水道事業は小さい単位で行われている。簡易水道769事業を含めて、全国に2123事業も存在し、水価格も事業者ごとに異なっている。その差も非常に大きく最大では14倍ある。

今後人口の減少が予測される日本では、1人当たりの水道負担が大きくなる。しかし水道料金が赤字化して高くなるのは、そのせいばかりではない。むしろ多くの問題は、これまでの水道の考え方にあったのかもしれない。

水道料金は各事業単位で独立採算で決めて良いことになっており、どこに住むかによって年間にすれば数万円違ってしまうのだ。その中で水道料金の高い地域は、ほぼダムを造った地域になっている。

高いものを見ると、「夕張シューバロダム」「宮ケ瀬ダム」「月山ダム」などに水源を依存する自治体が、水道料金が高いのだ。これに対して安いのは、井戸から汲んだ水を供給している地域だ。ダムを造らず、良質の水道水に恵まれた地域が安い

なぜ無駄なダムが造られるのか?

ダムがなくても川に水は流れているが、その水には水利権がついている。しかも水利権はこれだけ農業の水利用が減っても失われない。水利権は他に譲渡したりすることができないものとされているからだ。

そもそも高くつくダムを造らざるを得なかったのも、この水利権のせいだ。川に流れている水には所有者の名前は書かれていないが、水利権はついている。川の水を使って発電や水道供給をしようとしたら、川に流れる水量に影響を与えずに水を使うしかない。

そこで造られたのがダムである。ダムは川を流れる水のうち、余分な水だけを集める。流れる水はそのままに、一時的に多く流れる水をダムでせき止めて、その分だけ使うのだ。

ところが、日本の農業に利用する水は減り続け、今や往年の利用水量の半分以下になってしまった。だから農業用に確保された水を転流すれば、それだけで水は足りてしまうのだ。水利権に手を付けずに、ダムを造らせたのと同じ構図が今回の水道民営化にある。

日本では、土建国家と呼ばれるほど公共事業が進められる状況の中で、必要以上のダムが造られた。ダムに貯められた水のうち、使われない水の方が多いほどなのだ。そのことは、各地の水需要の予想図を見るとわかる。水需要が減っているのに、自治体の考える水需要の予想図だけが伸びているのだ。これではどんどんダムが造られてしまう。

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