東芝の調査でわかった皮肉な結果
また、論文では調査対象とした6社別の分析も行い、次のことがわかりました。
- 日本電気:忍耐力、計画力、批判精神などが重要
- 日立製作所:やる気、押し、社交性、闘争心などが重要
- 東芝:柔軟な考え、計画力、批判精神が重要。責任感はマイナスに作用
- 三井物産:交渉力、運への自信、体力などが重要
- 三菱商事:ほとんど関連なし。強いていえばモチベーション
- 日商岩井:ほとんど関連なし。強いていえば運への自信
統計分析では、N(分析する人数)が減ると有意になりづらいという特徴があります。
つまり、企業別にすると必然的に各々のNも減る。
それでも東芝だけ、有意に「責任感の高さはマイナス」という結果が示されたのは、昇進との関連性の強さを伺わせる結果と解釈できます。
東芝だけ。そう東芝だけが「責任感」がマイナスとは……。その後の末路を予測している結果です。
当時の上司たちは“今”の東芝のゴタゴタをどんな風に見ているのでしょうね。ぜひとも聞いてみたいところです。
無責任な世界のCEOたち
いずれにせよ「無責任なヤツほど出世する」という結論は海外の多くの研究で示されていて、米国ではその責任感を個人のパーソナリティ特性と明確に位置づけ、「他責型」と「無責型」に分けるのが一般的です。具体的には、下記になります。
- 他責型は「人を責める」「人のせいにする」タイプ
- 無責型は「自分の関わりを否定する」タイプ
<他責型の事例>
米国企業のトップの7割はこのどちらかに属するとされ、他責型の事例としてよく取り上げられるのが、BP(石油会社のブリティッシュ・ペトロリアム)の元CEO・トニー・ヘイワード氏。
BP社といえば、2010年4月にメキシコ湾沖合80km、水深1522mの海上で海底油田の掘削作業中に、大量の原油をメキシコ湾へ流出させるという大規模な事故を起こした企業で、このときの事故で11人の作業員が死亡。全米を震撼させる大惨事となりました。
当時CEOだったヘイワード氏は事故直後に「一体、どうして我々がこんな目にあうんだ」と報道陣の前で嘆きフルボッコにあった。それでも一向に態度を改めることなく、徹底的に責任を否認したのです。
事故2週間後には、「メキシコ湾は広大だ。海全体の水の量に比べれば、流出した石油と分散剤の量など微々たるものだ」と発言し、科学者たちが「部分的に溶解した原油が、海中を浮遊する様子」を捉え、責任を追求するも、「汚染物質などない。科学者はおかしい」と反論。どこまでも「他者」を責め続けました。
<無責型の事例>
一方、無責型の事例として上げられるのが、ヒューレット・パッカード社史上最悪のCEOと揶揄されたカーリー・フィオリーナ氏。彼女は “ガラスの天井”をぶち破ってきた自他共に認めるエリートで、会社が倒産する数日前「自社のバランスシートは健全」と公言しました。
しかしながら、経営は悪化の一途をたどり、挙げ句の果て辞任。過剰な人員削減や安易な戦略が「企業を衰退させた」と大批判され、“全米至上もっとも無責任なCEO”とも呼ばれています。
その他にも、倒産後も責任を否定し続けた老舗投資銀行ベアー・スターンズ のCEOアラン・シュワルツ氏も、嘘つきで傲慢な「無責型」に分類されています。
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