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アベノミクス「第3の矢」でコーポレート・ガバナンスは改善!ROE向上には効果があったが……

安倍政権が実践する経済政策「アベノミクス」ですが投資家の山崎和邦さんは自身のメルマガで何度も「第3の矢」の出遅れ感とパワー不足を指摘してきました。しかし、コーポレート・ガバナンス改善に関しては一定の効果を認めています。コーポレート・ガバナンス改善は株式市場においてどのような効果をもたらしたのでしょうか。自身のメルマガで詳しく言及しています。

社外重役ほど頼りにならないものはない

アベノミクスの「第3の矢・成長戦略は難しい」と本稿で何度も言ってきたが、少なくともコーポレート・ガバナンス改善についての推進は、ROE向上という企業行動に直結し、現にこれが海外勢の買いを誘い、野村の企業価値ファンドなども組成されて市場を賑やかにし、株式市場にとって直接の効果はあった。

いまほど政策と株価とが密接な関係にある内閣はなかったから安倍内閣の狙ったところであったとしたら見事な手並みと言ってよかろう。

一方、コーポレート・ガバナンスというのは、伝統的な日本的経営の欠陥を是正し得るが同時に日本的経営の強みもなくしてしまってアメリカナイズされた、機能的ではあっても無機質な企業風土を産む始まりだと後年反省することになる恐れがあるような気がしてならない。機能本位で数値本位で行くゲゼルシャフトは、30年ほど前にはエズラ.ボーゲルの「ジャパン.アズNO.1」で海外からも持て囃された「日本的経営の良さも強み」も終わるのかもしれない。神戸大学大学院教授の三品和弘先生はこれを「終わりの始まり、の劇薬」と書いている。一理ある。

コーポレート・ガバナンスと言えばすぐに社外取締役の導入を言う。筆者は内部を知っているから述べるが、社外取締役と言ってもクビになるのが嫌だし、自分の本籍の企業ではないから、社長の耳に痛いことは言わないものだ。

カルロス.ゴーンが、ソニーの社外重役として出井伸之へ辞めるように説いたという話があるが、それは日産自動車という根拠地があって、ソニーの役員など何の未練もなかったからだ。

82年秋の三越の岡田茂元社長を15秒で社長解任した取締役会も、社外重役と言っても時の三井の長老.江戸英夫三井不動産会長(当時)達が後押しして河村貢弁護士が仕切った辞任劇だった(彼の実弟が筆者と親しい中で、筆者は表裏を全部聞いていた)。

社外重役と言えば何でも言えるというほど、企業内の権力の力学は単純ではない。当の社外重役がその地位に何の魅力もなくもちろん無報酬で、いつでも辞めるという気がなければ、全権力を握る社長の耳の痛いことは言えないものだ。

筆者は上場企業の18年間の役員時代に何人もの社外重役を見てきたが、社外重役ほど頼りにならないものはない。その企業内権力構造を熟知しない者が会社法上の、或いはアメリカナイズされた企業観で社外役員を置けばコトは進むと思っていたら大甘ちゃんだ。

山崎和邦 週報「投機の流儀」』(2015年5月24日号)より一部抜粋

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