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自分の子や孫を「貧困層」に落とさないために私たちができること=山田健彦

将来の年収に影響するのは大学よりも父親?

一方では、反対論もあります。代表的なのは、「大学教育をすべて無料にするとか、返済不要の奨学金を広く用意すると、自分の学費と生活費を親から面倒を見てもらっている人は得をする。対して、家計を支えるために、大学なんぞにいっておれない人々に対しては増税などで負担増を強いるだけではないか」というものです。このように、社会制度が教育制度やその成果に与える影響を研究するのを「教育社会学」と呼ぶそうです。

もう1つ、メディアではほとんど報道されていませんが、「教育経済学」的見地からの議論もあります。慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の教育経済学者・中室牧子准教授の研究によると、「どの高校や大学にいっても、将来の年収に影響しない」「父親が勉強を見ると、子どもの学習時間は長くなる」そうです。
※参考:「じつは学歴で年収は変わらない」日本の教育を変えるエビデンス・ベーストとは? 中室牧子さんに聞く – The Huffington Post

教育社会学と教育経済学の違いですが、中室准教授は「教育社会学は、教育格差や不平等に注目し、親の所得や子どもの学力との関係を分析します」「教育経済学では、子どもが自分で選べない“親”や“遺伝”などの影響を制御したうえで、子どもの学力を上げるために、私たちに何ができるのかを分析します」と言っています。

教育経済学の代表的な成果としては、米国プリンストン大学の経済学者らが「大学の選択は将来の賃金に影響しない」ことを明らかにしています。この結果を踏まえ、米国では高校の進路カウンセラーは生徒に「偏差値で大学を選ばずに、何をやりたいのかで選ぶことが大事だ」とアドバイスしているそうです。

生涯賃金に影響を与えるのは、5歳以下での教育かもしれない

どこの大学に行くのかで将来の収入に影響が出ないのなら、いったい何が影響を与えるのでしょうか。

アメリカでは、「5歳以下の教育や健康への投資が、生涯に渡って大きな影響を与える」という研究が多数報告されているとのことです。子どもや孫に、学習する習慣を身に着けさせることも大事です。

中室准教授の調査によれば、「親が勉強時間を決めて、子どもに守らせる」「親が勉強を見ている」と、子どもが自ら学習する習慣を身につけるそうです。調査では「父親が、机に座って勉強を見ている」場合に、もっとも学習時間が長くなる傾向が見られました。

また親ではなく、大人が子どもの勉強を見た場合でも、子どもの学習時間が増える結果が得られたとのことです。親や大人の行動によって、子どもの学習時間は変わるのですね。

また、中室准教授は「『親の学歴・収入が高いほうが、子どもの学力が高い』という相関関係を明らかにした研究成果とも照らし合わせると、下位層の子どもの保護者の学歴や収入は、高くないと考えられます。貧困の世代間連鎖は、深刻な社会問題です。これを断ち切るために、下位層の子どもたちの学力をどう上げていくかが重要です」と述べています。

どのようにすれば子どもたちの学力が伸びるのかを調べることなく、「教育の無償化」のみに焦点を当てている今の国会の議論には、ちょっと問題があるのではないでしょうか?

なお筆者のブログにも補足で、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授(2000年、ノーベル経済学賞受賞)の研究について載せています。

【関連】高等教育無償化の財源に?「教育国債」にひそむ日本の問題点=久保田博幸

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資産1億円への道』(2017年2月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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