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経営危機から一発逆転。シャープの株価はなぜ急伸しているのか?=栫井駿介

推奨理由

ご存知の通り、シャープは経営危機に陥り、現在は鴻海の傘下で経営再建中です。これまでは液晶への投資失敗で多額の赤字を垂れ流してきました。技術者の流出が続く中、台湾企業主導で再建できるか焦点となっています。

直近に公表された第2四半期決算ではギリギリ営業黒字に持ち直し、経営再建に向けた意気込みを感じることができました。もちろん、意気込みだけで経営を立て直せるわけではありませんが、着実にコスト削減が進んでいることは事実でしょう。

決算発表とタイミングを同じくして、日本経済新聞朝刊に『シャープ戴改革の行方』と題する連載が開始されました。本連載から感じ取れることは、戴社長が思った以上に現実路線だということです。

これまで液晶技術を磨いてきたシャープにとって、液晶の次と目される有機ELへの投資は避けては通れないと言われていますが、同氏はあくまで慎重姿勢を貫いています。有機ELの試作ラインを整備することは決定したものの、すぐに量産体制に入るのではなく、あくまでディスプレイ事業の業績回復を優先するとのことです。
※参考:シャープ戴社長が有機ELに慎重なわけ – マイナビニュース(2016/11/08)

このことに対して、私は好感を持って受け止めています。有機ELは次期iPhoneなど、これからのスマートフォンなどのデバイスの主流となることが確実視されていますが、すでに韓国や中国勢は大規模投資を進めています。このままいけば、供給過剰により価格競争は待ったなしで、価格破壊で赤字を垂れ流した液晶の二の舞になりかねません。

誰よりも液晶や有機ELに熱が入っているのが、シャープを買収した張本人である鴻海の郭会長です。戴社長は郭会長の忠実な部下として出世してきましたが、その上司に対して意見し、自身の姿勢を貫けるかどうかが焦点となります。戴氏は今月か来月には鴻海の役員を退任するとしており、それを契機にシャープの利益を最優先することが期待されます。

もし戴社長が有機ELへの設備投資競争から脱し、収益性重視でシャープを経営することができれば、シャープの将来は明るいと考えています。なぜなら、同社のIoTをはじめとする家電製品には目を見張るものがあるからです。

例えば、今夏に発売した「蚊取り機能付き空気清浄機」は、東南アジアで予想を大きく上回るヒットとなりました。さらに「ヘルシオ グリエ」など、ついつい欲しくなるような商品を発売し、好調な売れ行きを記録しています。鴻海による買収決定以降、このような独自性のある商品が増えてきているように感じます。(コーポレート・メッセージも「Be Original」に変更しました。)

日本の電機メーカーの問題点は、いい製品を作っても、多くの人にとって必要がない機能に余計なコストをかけてしまっていることにありました。しかし、経営者が外国人となり、広い視野で物事を見られるようになるうえ、売れる商品ができれば鴻海の圧倒的な生産力で瞬く間に世界を席巻する可能性があります。うまくいけば「白物家電のアップル」になることも不可能ではありません。

ただし、今はあくまで可能性の段階にすぎません。まずは戴社長が目の前の経営改善を達成できるかどうかがカギとなります。ようやく表舞台に出てきたところで、その能力は未知数ですが、最近の報道やインタビューを見ていると好感が持てます。

もちろん、鴻海がこれからシャープをどう扱おうとしているかによってその価値は大きく変わるでしょうし、黒字化していない段階で時価総額8,000億円超は決して割安といえる水準ではありません。それでも、もし化けたら大きいということから、期待を込めて掲載いたしました。

小さく保有して今後の方向性を見守るという戦略もありでしょう。日本の電機メーカーの今後を見つめるという点でも、目が離せない銘柄です。

つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年3月15日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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