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「テロ対策」の御旗のもとに~共謀罪で得をする人、損をする人=斎藤満

共謀罪で本当に「得をする」のは誰か?

このようにみると、この「共謀罪」を通すことで、誰が得をし、誰が損をするのか、透けて見えてきます。

建前上は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催されれば、国民に利益、ということになるのですが、多くの国民はそれを「共謀罪」のおかげとは思いませんし、「共謀罪」などなくても当然、無事にオリンピックが開催されると期待しているでしょう。

むしろ、日米安保を進め、日本の防衛費を拡大し、F35戦闘機の追加購入、高高度ミサイル防衛システム「THAAD」の日本配備などを進めたい米国政府、米軍事産業に大きな利益がありそうです。

そして、政権批判を封印することで政権交代を回避できる現与党にも利益となります。先日も「森友学園」「第2の森友学園」で安倍政権を厳しく追及する野党に、「もし何もなかった時にあなたは責任をとれるのか」と安倍総理が恫喝していましたが、もしこの改正法が通れば、政権を脅かすグループの言論を封じ込める余地が生じ、政府批判が次第に難しくなる可能性があります。

「治安維持法」があった戦前の日本や、現在の北朝鮮のように、政府の保身に役立つ面があるのです。

その裏返しで損をするのは、新聞、テレビなどのメディアと、言論界が中心ということになります。政府批判や安保批判をする人々もさることながら、彼らから相談を受けたり話しかけられて下手に相槌も打てない、相談にも乗れない、との思いを国民が抱き、社会に不安が広がる懸念もあります。

戦前の治安維持法もドイツのナチスやヒトラーも、当初は国民が支持した面もあるとは言え、次第に国家が国民の自由な発言、行動を縛るようになった歴史があります。

「共謀罪」がなければテロが防げないというわけではありません。むしろこの「共謀罪」によって、国民の言論の自由、基本的人権が脅かされる面があります。

その点、特定秘密保護法の22条には、「これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と規定してありますが、何をもって「不当に」にあたるのか、正当であれば基本的人権の侵害にはならないのか等、いろいろな問題があり、この程度では国民の不安は解消されません。

こうした法は、一旦通してしまうと、後でどう修正され、国民に不利になるかわからないところがあります。間違っても「どさくさ」に紛れて通してしまう事態は避けねばなりません。国民の厳しい目でチェックする必要がある法案です。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年3月16日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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