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中国をイラッとさせたトランプ関税、真の標的はロシアだった=高島康司

今後はより多くの製品に高関税が課される

このような高関税の導入であるが、その目的は今年11月に行われる中間選挙をにらみ、トランプ大統領の基盤であるラストベルトの支持を確実にする必要から実施されたと見られている。

周知のようにラストベルトとは、グローバリゼーションの進展による国際的競争力の喪失で衰退したかつての製造業の中心地域のことで、ペンシルバニア州やミシガン州などの中東部に集中している。こうした地域では輸入品におされて不振が続いているので、高関税を賦課して国内の製鉄業を立て直せば、雇用の増大が見込めると判断したと見られている。

しかし、実施される可能性の高い今回の高関税は、中間選挙に勝利するという短期の目的だけではない。もちろんそうした目的があることは間違いない。

だが、今回の政策ははるかに長期的なトランプ政権の政策に基づいている。それを前提にしたとき、今回の政策はほんの端緒にしか過ぎず、ここから多くの製品に高関税が賦課される可能性が高いと見たほうが妥当だ。

「長期的な安全保障戦略」の一環

今回の高関税政策は唐突に出されたものではない。意外にあまり報道されていないようなのだが、これは昨年の7月21日に出された「大統領令」による調査を踏まえた結果なのである。

これは、防衛産業の強化へ向け、国内製造業の防衛関連製品や部品の供給能力などについての実態調査を指示する大統領令であった。すでに大統領令の前からトランプ政権は「国家安全保障上の脅威」を理由に鉄鋼やアルミ製品について輸入規制を視野に調査中だったが、大統領令によって実質的に調査範囲を拡大した。

調査は国防総省が主導し、商務省やエネルギー省など政府全体で実施し、調査結果と対策案を270日以内に提出する。国内製造業がこれ以上衰退すれば、軍需品の確保に必要な製造能力や人材、物資、税収などが失われ、国防上の課題になり得るとして影響を幅広く調査する方針だった。

この調査は、トランプ政権の経済の繁栄と力強い製造業、防衛産業の基盤なくしては、軍事大国ではいられないとの判断から実施された。

3月1日に発表された鉄鋼とアルミニウムの高関税の実施は、このように昨年から行われていた調査の最初の結果として出されたものだ。昨年の時点では調査を受けて提出する対策案が、貿易相手国への制裁措置など通商政策にも波及するかどうかには言及されなかったが、今回の発表で同盟国といえども高関税適用の例外ではないことがはっきりした。

Next: 目的は軍事力の強化。貿易戦争の引き金となるか

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