fbpx

中国をイラッとさせたトランプ関税、真の標的はロシアだった=高島康司

ロシアに負けない軍事力を

そして、この大統領令はトランプ政権のさらに大きな構想を選定にして出されたものだ。その構想の具体的な内容は、トランプが大統領選に勝利した直後の2016年12月16日に、CNAS(新アメリカ安全保障センター)というシンクタンクが出した「未来の鋳型(Future Foundry)」というレポートである。これは次期国防長官に向けて出された政策提言だが、トランプ政権の基本的な政策になっている可能性は高い。

ちなみにCNASとは、2009年にジャパン・ハンドラーのひとりである元国務次官補カート・キャンベルが中心となって設立した、軍産複合体系のシンクタンクである。ここには、リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイなど、ジャパン・ハンドラーの中核的な人物が多数結集しており、選挙中はクリントンを支持していた。

「未来の鋳型」は、ロシアの軍事力はアメリカをすでに上回っており、アメリカは覇権を維持するだけの軍事力をすでに保持していないとする報告書だ。その理由は、アメリカの軍事産業がITや製造業などの最先端テクノロジーにアクセスできていないからである。アメリカの軍事産業のベースとなっているテクノロジーは、すでに時代遅れになっているのだ。

この状況を打開して軍事力を再建するためには、軍事産業を再編成し、最先端テクノロジーを基礎にした生産基盤を早急に作らなければならないとしている。

発表されたロシアの最新兵器

このレポートの前提になっているのは、アメリカの兵器システムはロシアのそれに劣っているという明白な認識である。そのように聞くとちょっとピンと来ないかもしれないが、3月1日、ロシアのプーチン大統領が一般教書演説で明らかにしたロシアの最新兵器システムを見れば、アメリカのこの不安が決して根拠のないものではないことが分かる。

以下がプーチン大統領が言及したロシア軍の最新兵器だ。

・原子力推進巡航ミサイル
推進力が原子力なので航続距離の制限がない。無限に飛行可能。

・ICBM搭載の無人原子力潜水艦
非常に深い深度を高速で音もなく移動できる。

・「キンザール」ミサイル
最高速度はマッハ10で航続距離が2000キロ中距離弾道ミサイル。

・「アヴァンガード」ミサイル
最高速度マッハ20の戦略ミサイル。

これらの兵器で特に注目すべきなのはミサイルだ。速度とコースを変えながら飛行できるので、アメリカのミサイル防衛システムを突破できるとしている。

こうした最新鋭兵器はアメリカもまだ保有していないと推測できる。それというのも、CNASのレポート、「未来の鋳型(Future Foundry)」にもあるように、現在のアメリカの兵器システムは1990年代の生産システムによって作られたものなので、AIやロボットなどを中心とした第4次産業革命型のテクノロジーには追いついていないからだ。

Next: 製造業の拠点はすでに海外へ。米国が軍需産業を立て直す秘策とは?

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー