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中国をイラッとさせたトランプ関税、真の標的はロシアだった=高島康司

「製造業のアメリカ」への回帰

しかし、アメリカの軍需産業を技術的に高度化することは容易ではないはずだ。なぜなら軍需産業は国家の安全保障に深くかかわる分野なので、IT産業が行っているように、生産拠点を労働力の安い海外に分散させることは実質的に不可能だからである。兵器の開発と製造は基本的に米国内で行わなければならないからだ。

だが、すでにアメリカの製造業の拠点は海外に移転してしまっている。軍事力を高度化するためには、生産拠点をアメリカに戻さなければならないのだ。そのためには、高関税を実施して海外からの輸入を抑制し、製造業を保護する政策を実施しなければならない。

これはレポート、「未来の鋳型」にも滲み出ている思想である。また以前も当メルマガで書いたように、ブラジルの著名なジャーナリストであるペペ・エスコバルが、トランプ政権の背後にいるブレーンのひとりから、トランプ政権の方針として聞き出したことだ。

また「未来の鋳型」には、アメリカの労働者はグローバリゼーションの進展で没落し、大変な格差が生まれていると書かれている。これはアメリカの国力を維持するには大変なマイナスであるとする認識も前提にある。ひとつの家族が夫の給与だけで豊かに暮らせるという、かつてのアメリカを取り戻してこそ、社会は基礎から安定するという認識だ。

これは国家の安全保障にとっても非常に重要なことだ。アマゾングーグルなどの最先端のIT企業は、結局は効率的な配送サービスやデータの解析と運用をするビジネスにすぎない。国家の安全保障に寄与するところはほとんどない

したがって、製造業の国内回帰を促進させて軍事産業を強化し、それに必要となる国内のインフラを整備することで、中間層を復活させなければならない。

グローバリゼーションの否定と一国主義

これが今回の鉄鋼とアルミニウムに対して、保護主義的な高関税をかける方針の前提にある認識だ。これは、安全保障上の脅威からアメリカを守り、軍事技術でロシアや中国を凌駕するとしたトランプ政権の方針から出された政策である。これは、大統領令に基づき昨年の7月から開始された調査の最初の結果である。

ということは、製造業の基盤をアメリカに回帰させて軍需産業を強化するために、半導体などの高度なテクノロジーにこれから包括的な高関税が賦課される可能性は高いと見るべきだろう。

これはまさに、これまで世界経済をけん引したグローバリゼーションを否定し、軍需産業をベースにした一国資本主義のモデルへの回帰である。

Next: 今後、世界的な不況が始まる可能性がある

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