シリア空爆は予定調和か
強硬姿勢を見せるトランプ大統領は、週末に英仏両国と共にシリア空爆に打って出た。米国によるシリア空爆は2017年4月以来ちょうど1年ぶり。米国に反撃する能力を持たないシリアへの空爆自体はそれほど大きな出来事ではなく、問題はシリアに駐留するロシア軍の動き。しかし、トランプ大統領が事前にTwitterでミサイル攻撃を予告したこともあってか、空爆による人的被害も、懸念されたロシアからの反撃も見られなかった。
シリアが化学兵器を利用した証拠は明らかにされていないが、ミサイル攻撃を実施し米英仏に反撃すると、万が一シリアが化学兵器を使った明らかな証拠が出てきた場合、化学兵器を使用したシリアを庇う格好になってしまうこともあり、ロシアもうかつに動けなかったようだ。
トランプ政権はその辺りも計算済みだったのだろう。Twitterでの事前予告を含めて考えると、シリア空爆は予定調和の一環だったともいえる。
米ロ中の間にある「暗黙の了解」
20014年のロシアがクレミアを併合した際にもNATOとロシアの軍事衝突は起きなかったし、今回のシリア空爆でもロシアは軍事的報復をしなかった。また、米中間の貿易でも前面衝突は回避される方向に動いている。
こうして考えると、代理戦争的な紛争は起きても、米ロ中といった大国同士は衝突しないという暗黙の了解が存在しているといえる。
米ロ中の間で暗黙の了解があるとしたら、米英仏3か国のよるシリア空爆が金融市場に与える影響は限定的だといえる。
トランプが通れば道理が引っ込む
大国間での暗黙の了解があるせいか、貿易面でも軍事面でもトランプ大統領の強硬姿勢が全て通り「トランプが通れば道理が引っ込む」という状況になってしまっている。
こうした中で17日から日米首脳会談が開催される。内政で苦境に追い込まれている安倍総理にとっては、「馬が合う」トランプ大統領との首脳会談でポイントを稼ぎたいところ。しかし、強硬姿勢が全てうまく行っている今のトランプ大統領相手にポイントを稼ぐのは難しい。
TPP参加を説得するような愚行に出たら、大きな反撃を食らいかねない状況だといえる。