大きく下振れした中国の経済指標
中国の5月の主要な経済統計が、大きく下振れしています。特にサプライズなのが、固定資産投資(1~5月の累計)と、小売売上高。
中国の「固定資産投資(1~5月の累計)」は、前年比6.1%増しでした。2018年に入ってから、つるべ落としのように落ち込んでいます。
この低さは、サプライズ的な低さです。1995年の統計開始以来の低さなのです。今までのボトムだった「1999年12月の6.3%増し」を記録更新しています。
さらに「5月の小売統計」も、前年比8.5%と、今年に入ってから落ち込んでいます。これは、2003年6月に記録した8.3%以来、15年ぶりの低さです。
マネーサプライの絞り込みも気になるところです。中国の5月のマネーサプライの伸びは、前年比8.3%でした。
中国経済は大きな壁にぶち当たっている
中国という国は、習近平を頂点とした中央集権国家を確立したとはいえ、習近平が2017年に独裁体制を確立する以前は、どちらかというと「多くの州政府が居並ぶ連邦制」のような国でした。
習近平以前の連邦政府的国家では、「中央(北京)が政策を練れば、地方が対策を打つ」ということが普通に行われていて、これが中国経済の最大の強みでした。地方の自治権が強かったので、当時は、ある意味、フレキシブルかつ現実的な経済運営が可能だったわけです。
ところが、習近平が権力を掌握して、中央集権が強化されてからは、地方の州政府の自由度は大きく削減されてしまい、中国経済の柔軟さは損なわれています。
そういった柔軟さが欠如した中で、中央集権的に債務削減(=不良債権処理)が推し進められているのです。経済運営では至る所で「きしみ」が生まれていることは、想像に難くないです。
巨大な不老債権を処理しないままでは、中央政府主導での構造改革は周期的に壁にぶつかります。2015年夏から2016年に走った「チャイナショック」はその象徴でした。
公式発表のGDPとは裏腹に大きく失速
2018年の中国経済は、公式のGDP統計とは裏腹に、大きく失速しているようなのです。
固定資産投資が過去最低の伸びになり、小売売上高も15年ぶりの鈍化が顕著になれば、内需全般に陰りが出ていることは、明らかです。
こういう「内需に陰りが出てきた」時の中国経済は、「輸出ドライブ」に活路を見出すしかないのです。
実際に、2017年の中国経済は、内需に陰りが出始めていたので、輸出ドライブを加速することで、なんとか難局を乗り越えたのです。トランプ大統領の大幅減税のおかげで、2017年の中国経済は大いにアメリカへの輸出を伸ばせたのでした。
ところが、2018年は、米中貿易戦争が顕在化、今の中国経済は、このままでは、輸出ドライブがかけられない状態に追い込まれそうです。