米国の覇権を脅かすのは「米国自身」
米国の覇権に限らず、帝国主義や植民地支配は、主に諜報と凋落によって築き上げられてきたと言っていい。幕末の日本でも同じ試みがなされたが、西郷隆盛と勝海舟による無血開城により、日本は付け込むすきを与えなかった。
米国のNATOの東への拡大も、東に拡大しないと確約してソ連の解体を促し、その後は、凋落やクーデターによって、内部から東側を切り崩していった。そのために、軍事援助を含む、莫大な支援を行ってきた。そして、軍事的な侵攻を行う時は、必ず同盟国を募り、正義のための戦いだとしてきた。
勝てば官軍は、米国にも当てはまる。第二次大戦以降、米国が行ったすべての戦争は、唯一の例外を除き、民主主義の擁護、世界の警察としての戦いだった。
ベトナム戦争が唯一の例外となったのは、米国が負けたからだ。これだけが侵略戦争だとされた。歴史は勝者が書き換えるものなのだ。
国際機関も米国の世界覇権の隠れた道具だった。これは経済政策も同じで、プラザ合意やBIS規制も、自国を有利にするために使ってきた。
これらのすべてを、トランプ大統領は放棄し、孤立しようとしている。
「ドル覇権」を終わらせるのも米国
ドルの覇権も同様だ。
ドルは世界一の経済国、市場、政治力、軍事力の通貨として、絶対的な流動性を誇ってきた。流動性は、安定、安全、便利という、通貨としての本質的な価値を持つので、常に新たな流動性を引き込む力がある。
一旦、覇権を確立すると、他の通貨がどんなに攻めても、その優位性は揺るがない。
ここでも、ドルの覇権を揺るがせるのは、米国自身だけなのだ。
貿易戦争や、様々な経済制裁を通じて、少しずつ、ドルは使いづらい通貨になっている。