本気かトランプ、自動車の燃費基準をあっさり撤回。環境より米国経済優先が鮮明に=矢口新

トランプ政権が自動車の燃費基準「撤廃」を提案するなど、経済合理性から環境規制コストを避ける流れが来ている。人類の未来や真のコストを考えると、本当に合理的だろうか。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年8月6日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

環境を守るコストなど知れたもの。いまケチると、将来の大損害に

企業のコストは、最終的に消費者が負担する

温室効果ガスの排出量規制や自動車の燃費基準など「環境規制のコスト」は、商品価格の上昇を通じて、結局は消費者の負担になるという。

そうした考えに加え、企業向けの選挙公約から、米トランプ大統領は「パリ協定」から離脱。米国内でも自動車の燃費基準を撤回すると発表した。

現行の米国の燃費基準はオバマ前政権下の2012年に定められたもの。適用期間は17~25年で、乗用車については2025年までに燃費を17年比で約3割改善するよう求めている。達成できなければ罰金が課されるという内容だ。

また、カリフォルニア州などが独自に定めていた燃費規制も、連邦法が優先するとして、廃止に向けた交渉を始める。

一方、2020年1月から世界一斉にスタートする船舶の燃料規制も、世界の物流ネットワークを揺さぶる課題として浮上。日本国内でも人手不足と相まって物流危機が深刻化するとされている。

こちらも、問題はコストの急増だ。

物流コストの増加に苦しむ一般市民

日本の経済政策の目標は物価を上げることだが、実際にモノやサービスの値段が上がると困るのは消費者である。

例えば、米国ではガソリン価格の値上がりは消費増税に匹敵するとして、経済成長の阻害要因として認識されている。

物価上昇と消費増税とが、日本に最も必要なものと考えている政府や識者たちは、どこでそうした考え方を仕入れたのだろうか?

それはともかく、自動車や船舶といった交通運輸のコスト増が、物価上昇を通じて、消費者負担につながるのは事実だ。

物流危機について、日経新聞は次のように書いている。

あるゆる船舶が対象となる。この規制をクリアーするための方法は次の3つだ。

(1)硫黄分を現在の3.5%から0.5%に引き下げた、低サルファと呼ばれる「適合油」に切り替える。

(2)従来の高サルファ重油を使い続けるが、スクラバーと呼ばれる排ガス浄化装置を取りつけ、船上で排ガスを脱硫する。

(3)燃料を重油から天然ガスに切り替える――。これは二酸化炭素の排出抑制効果も期待できるが、液化天然ガスを保管する冷蔵設備を船上に設け、エンジンも新型に切り替える必要があるので、大型の新造船に限った選択肢となる。<中略>

内航会社にはとても手が出ない。残るのは「適合油」を使う(1)しかない。<中略>

問題は「適合油」の価格と供給量だ。<中略>

内航海運は日本経済や日々の生活を支える「見えざるインフラ」である。国内物流の輸送機関別シェア(トン・キロベース)では自動車(トラック)の50.9%に次いで、43.7%を占める2位だ。なかでもセメントや石油、鉄鋼の国内物流のほとんどは内航海運に依存しており、基礎資材の物流は海なしでは成り立たない

出典:海運の憂鬱 硫黄のハードル、石油再編の呪縛 – 日経新聞(2018年8月2日配信)

この基準を満たす「適合油」を使うことで上乗せされるコストは、そのまま消費者が負担することになる。かと言って、このコストを避けることは必ずしも正解だろうか?

Next: 気候変動自体がコスト増を招く。失われる人命こそが大きな損失だ

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