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日経も間違えた?「老後資金の準備」で絶対に覚えておきたいポイント=近藤駿介

相談者の「目的」を第一に、運用を検討するのが優れた専門家

もし、小生がこうした相談を受けたとしたら、まず「目的」を明確にしたうえで、このような商品特性の違いと、それを利用した商品の組み合わせ方を説明する。

そのうえで、この商品の「25年後に111%になる」というリターンが適正なものなのかについて検討をしていくことになる。111%と聞くと10%以上増えて返ってくると単純に考えがちだが、「25年後に111%」は、単純計算すると「年率0.42%」でしかない。

この「年率0.42%」が適切なものなのか。直近の25年国債の利回りは1.25%であるから、これに比べると利回りはかなり低いといえる。しかし、25年国債は個人には手に入らないもの。

個人向け国債は現在10年までしかないが、個人向け国債10年物の利回りは直近0.294%だ。つまり、個人が現実的に得られる利回りとして「年率0.42%」というのは悪くない選択といえる。しかも、終身保険であるから、原則死ぬまでの保証が付いているうえ、税金上のメリットもある

株式投資においては「長期投資」という根拠の定かでないお題目を唱える人たちが、「老後資金の準備」という「長期計画」で選定した商品の返戻金の損益を気にするというのは、気持ちとしては分かるが本末転倒といえる。

本来、こうした矛盾を説明してあげるのが専門家の役割であるはずだ。

ミスリードを誘う「たとえ話」にご用心

しかし、この記事に登場する専門家は、「毎月2万3000円ほどのお金を25年間、継続して貸してほしい。25年後には貸してくれたお金の111%強を一括返済することを約束する。ただし、25年経たないうちにお金を引き揚げるなら、常に借りたお金を下回る額しか返さない」という、本質とはまったく異なる話にすり替えている。

本質的理解を深めるのに「たとえ話」を使うのはよくあることだが、それはあくまで、一般の人に理解し難い問題の本質を理解してもらうためのものである。本質と関係のない方向に議論を誘導する「たとえ話」は、無用な誤解を与えるだけなのでやってはいけない。

今回のケースであれば、専門家としては、その商品が加入者の目的に適ったものなのかを検討し、株式投資など他の方法とのメリット・デメリットを説明したあと、この商品が利回り的にみて他の商品と比較して高いコストを負ってしまっていないかをアドバイスするべきだ。

資産運用、資産形成において大切なのは、「目的を明確にすること」である。これをせずに「株価はいくらになる」とか、「この保険の解約返戻金はいくらか」という表面的な議論を繰り返しても意味はない。はっきり言って時間の無駄。

投資や資産形成においては、まず「目的を明確にする」ことを考えていただきたい。これができると「何ができるか」という選択肢を明らかにすることができ、最終的にその中で「自分に合ったものは何か」という観点から選択することができる。

資産運用も資産形成も「目的」を明確にしたうえで、それぞれの商品の特性を加味した組合せが重要だという意識転換をしない限り、資産形成は場当たり的になってしまうのである。

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2015年10月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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