インターネットは情報の移転を滑らかに、ブロックチェーンは価値の移転を滑らかにする
シバタ: ブロックチェーンの活用の仕方で、ICOをしないっていうのは、すごく面白いなと思うんですけど、ブロックチェーンの活用の話をいくつか教えていただくことはできますか?
安宅: はい。オタクコインのプロジェクトを進めて行く中で、ブロックチェーンを使うと面白いことができるなというのがいくつか出てきていています。
ひとつは、NFT(Non-Fungible Token)と呼ばれるデジタルデータのユニーク性を担保するものです。デジタルデータって今までコピーし放題だったので、そのひとつひとつの価値って無料に近づいていく、あるいは価値がないよねって思われていたんですけど、ブロックチェーンがあることで「これが本物」であり、「これがレプリカ」であるという区別ができるようになったんです。クリプトキティというデジタル上で猫が描かれたカードゲームがあるんですが、この猫ちゃんがデジタルなのに1枚1,100万円で売買されたりしています。累計でも25億円も取引されたりして。
ほかにも今、アートの世界で起こっているのは、モネとかアンディ・ウォーホルの絵の所有権を一万分割にしトークン化してブロックチェーン上に乗せ、みんなで所有するみたいな。Masterworksのような数億円する高額アートをみんなで所有する一口馬主的なサービスなども出てきています。
これをアニメの世界に応用すると、アニメのデジタルデータもひとつひとつをトークン化して価値をもたせることができるんですね。30年前までは、スタジオジブリがトトロのセル画をアートワークとして、透明なペーパーに描いていましたけど、最近はそれが全部デジタルに変わって、アニメの映画を1本作ると、だいたい数万枚のセル画データのフレームができます。
それは、今は全部コピーし放題だし、マスターデータが下手に流通してしまうと大変なことになるので、眠らせているわけですけど、ブロックチェーンでデジタルでの「本物」を担保しつつ、デジタルデータに価値がつくんだったら、最終的にできあがるアニメのデータ1枚1枚が価値を持つ世界があってもいい。
それが、例えば、1枚1万円で売れるとしたら、眠らせていたものが急に価値を持ち出すので、それがファンの手元にあって、コレクションになっていくみたいなことが起こるんじゃないかと思います。
シバタ: 確かに。それは面白いですね。
安宅: それをもうちょっと応用していくと、例えば、声優さんの声のデータとかも売れるかもしれないです。声優さんが「おはよう」って言った、彼女の「おはよう」は俺のものだ、みたいなことも。とっても炎上しそうな話ですが(笑)
シバタ: それをほしい人がいるわけですよね。
安宅: そうです。コレクター的に。真のファンだったら買いたいですよ。あと、VチューバーのVRデータも、その世界にひとつしかないことが証明されているとしたら、ものすごい価値がつくかもしれません。
ソーシャルゲームのカードゲームも、カード1枚1枚がデジタルデータだったのが、ブロックチェーンでユニーク性が担保されて、価値を持ちだしている。遊戯王カードみたいにフィジカルなトレーディングカードでもレア度に応じた価値があるので、デジタルでも普通に価値が出そうですよね。
ゲームをやめるときに、そのゲームのカードを売って換金して、他のゲームを始める元手にするというようなことができたりします。日本発のMy Crypto Heroesがその先駆けになっています。
さきほどのセル画の話で行くと、トトロとかフィジカルなセル画はすでに1枚500万円の値段がついて、もうアートとしての価格になってます。その価値もデジタルの世界にやってきてもおかしくないと思っています。
シバタ: 今の話はすごく面白いなと思っていて、デジタルなデータのコピーがされないっていうユニーク性が担保されることで、お金が回るようになって、しかもそれが、流動性が高まるので、どんどん次の新しいところにお金が流れていく可能性があるということですよね?
安宅: そうです。
シバタ: それはすごいですね。
安宅: 未来的ですよね。それをさらに、さっきのアニメファンがお金を出し合って、アニメのコンテンツファンドを作るっていうところに組み合わせられるんじゃないかと思っています。
出資というより将来的なデジタルフレームのデジコンの予約権を販売する。最終的にできあがるものは、今はアニメのデジタルデータなんですね。アニメが完成するまでに2年とか3年かかるんですけど、2、3年後のデジタルデータの1枚1枚のフレームに対して予約販売するとして、一人1万円出してくれれば、100万人いたら100億円のファンドができます。そのフレームは将来資産性も持ったりする。
シバタ: 面白いですね。