金融庁が5月28日、証券取引所の市場区分を情報漏えいしたとして、野村HDおよび野村證券に業務改善命令を出した件ついて投資顧問業者の視点から解説します。(『日本株投資家「坂本彰」公式メールマガジン』坂本彰)
株式会社リーブル代表取締役。サラリーマン時代に始めた株式投資から多くの失敗と経験を積み、株で勝つための独自ルールを作り上げる。2009年10月に130万円だった株式資産は、2016年に6000万円を突破。定期預金などを合わせた資産は1億円超。2012年より投資顧問業(助言)を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供するかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。前職はラーメン屋という異色の経歴。メールマガジン『日本株投資家 坂本彰 公式メールマガジン』は2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数2万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。主な著書に『小売お宝株だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)日本証券アナリスト協会検定会員候補。
商売の常とう手段が違法になる…厳しい金商法
東証一部上場を維持する区分についての情報を漏洩
金融庁は5月28日、証券取引所の市場区分見直しについて情報漏えいしたとして野村HD<8604>および野村證券に業務改善命令を出しました。
問題となった部分は東証一部に維持するための区分について、時価総額に関する情報を漏らしたこと。インサイダーには該当しないものの、投資判断に重要な影響を及ぼしうる非公開情報でした。
当局は「証券会社として求められる水準のコンプライアンス意識が欠如していた」と指摘しました。
同社は2012年にもインサイダー取引問題で業務改善命令が出されています。再三の行政処分となり、当局も重くみているようです。
このニュースですが、同じ金融商品取引法を順守する会社として、わかる部分もあります。
私のような全ての業務を行う者であれば、営業からコンプラまで1人でやる必要があります。そのため法令違反によるペナルティの重大さはわかっています。
でも、証券会社のような大企業になると、営業とコンプライアンス部門は別の部署、あるいは人が担当します。
通常であれば情報発信する前に金商法違反がないか?法令を遵守しているかチェックを通すわけですが、特ダネ=「儲かる情報」に目がいってしまいチェックを通さなかった、あるいは機能しなかった可能性がありそうです。
実際、不祥事が起きたのは「グローバルマーケッツ営業2部」で営業部門となっています。
また、金商法は法律の中でも特に厳しいと思います。
例えば値引き販売。スーパーなら特売日があり卵や納豆など価格を安く売る日があります。いわゆる目玉商品ですね。
これを投資顧問業がするとアウトです。
例えば、年会費10万円のコースを9万円に下げたとします。こうなると10万円の人は不利益を被った。9万円の人に便宜を図ったと判断されます。
いわゆる「特別な利益の提供」に該当してしまいます。
昨日買った卵より今日の方が安いから差額を返金しろ!と怒る人はまずいません。
他の業種では当たり前、商売の常とう手段が違反になるのです。
主幹事証券外しという代償
金商法は細かい部分まで知っておく必要があるのですが、新入社員や転職で営業部門に配置された人は、法令にひっかかりやすくなると思います。
でも、それで許されるわけではありません。
同社はこの問題により、社債発行の主幹事証券から外されました(主幹事とは、会社が株式や社債の募集や売り出しをする際、証券会社が引き受けます。その中心になる証券会社のこと)。
先日も日本郵政のかんぽ株追加売却に関しても主幹事を外されたというニュースがありました。
2018年のIPO主幹事実績を確認すると…
1位 みずほ証券 24件
2位 野村證券 23件
3位 SMBC日興証券 21件
4位 大和証券 13件
5位 SBI証券 11件
2018年は2位。また、2016年~2018年の累積数は68件と業界トップの実績を残しています。
情報漏洩により今後、主幹事証券から外れるという痛い代償が待っていそうです。
今後、政府が保有する日本郵政株の追加売却についても主幹事を外される可能性もあり。
先月は1,000億円という巨額赤字の決算を発表したばかり。収益改善はさらに遠くなってしまうのでしょうか?
image by: Ned Snowman / Shutterstock.com
『日本株投資家「坂本彰」公式メールマガジン』(2019年5月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2009年10月、130万円だった株式資産は2015年に5000万円を突破。定期預金などを合わせた資産は1億円に。平成24年より投資顧問業(助言)を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。メールマガジン「日本株投資家 坂本彰 公式メールマガジン」は2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数2万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。2016年12月1日『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』が日本実業出版社より発売!