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正しく理解する「バブル崩壊」の歴史~暴落と調整を見分けるために=若林利明

アベノミクス相場における数回の「調整」

2012年の年末から東京市場はアベノミクスをきっかけに上昇局面に入りますが、その流れの中で直近に至るまで数回“調整”があったように思われます。 前述したように暴落との対比で下落率、下落期間の異なる点が重要です。

世界的低金利状態が定着した市場では、機関投資家間の競争、またそれに呼応する金融商品の開発等が、しばしば、調整という“綾”を作り出します。「この綾は、本格的に米国のマクロファンダメンタル、企業業績に反映すれば深刻ですが、単なる綾であれば調整となります。基本は米国経済の中期的な動き」です。

日本で生じた暴落は3回ですが、その時の外国人投資家の投資スタンスが異なることを再度確認しましょう。当時の行動をレビュー、彼らの行動を理解すれば今後の東京市場の見方の助けとなるのは確かです。調整時の外国人投資家の売り買いと比較して整理しておくことが大事です。

覚えておきたいバブル崩壊と「暴落」の歴史

1.金融バブル

歴史的高値を付けた段階で東京市場のPERは60倍以上、PBRも5倍~6倍の状態でした。当時外国人投資家の東京市場での株式保有比率は5%~7%です。外国人はこの相場に売り手として市場参加しました。

世界の市場からみると東京市場というローカル市場が国内要因(過剰流動性、余剰資金吸収の一環)で勝手にクレージーな上昇をした、との印象です。最近、当時の動きと比較することがありますが、あまり意味のないことです。

2.ITバブル

米国ではハイテクブームが起こり、その種の銘柄が多く上場しているNASDAQ市場に資金が殺到、市場平均でなんとPER30倍まで買われたのです。ニューヨーク市場はそれ程踊っておりません。

その余力で東京市場のハイテク銘柄と称される7業種(自動車、精密、電気機器等)が集中的に買われました。2000年には外国人による東証一部日本株の保有比率は20%近くに達しておりました。日本の投資家は大手銀行への公的資金が投入され東京市場に安堵感が漂っている頃、外国人投資家のハイテク銘柄への積極買いにより活気づけられたのです。

しかし、NASDAQはその後、業績予想が落込む事が次第に明らかになり買い上った銘柄が急速に値を崩すことになったのです。東京市場もそれに追随、外国人投資家の売りで崩れたのです。金融バブル崩壊とは全く異なるものです。

3.米国金融市場崩壊

米国、ニューヨーク市場は米国国内の資金余剰のはけ口を各種商品に求めました。その典型がサブプライムと称する個人向け住宅融資です。単純にいえば個人の信用膨張を金融機関が煽ったのです。法人向けには信用保証のビジネスを展開、こうした低金利を背景としたビジネスが破綻したのが2008年のリーマンショックです。

米国第4位の証券会社の倒産です。金融業界発信の世界不況です。落ち着くまでには時間がかかりました。東京市場も外国人の売りに呼応し同一歩調です。しかし、急速な円高により日本企業の利益落ち込みが加速され、日本の不況感は4年位続き先進国間では最長となりました。

そこには、企業業績、PER水準等が世界の株価同一現象の下に忠実に再現されております。ニューヨーク株式市場の動きとそこでの株価決定要因の反映された東京市場です。

【関連】デフレの国・日本における「マイナス金利政策」の盲点=三橋貴明

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投資の視点』(2016年2月2日号)より一部抜粋

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