日本株は戻り相場を演じつつあるが、一方でリスクが高まっているという指摘もある。そんな中、このところの話題はソフトバンクGに集中しているようだ。(『億の近道』街のコンサルタント)
20数年間を金融(主に証券)会社で過ごし、投資銀行業務や事業育成の業務を担当。「金融機関に籍を置く(安全な)立場で客観的なことを言うより、いっそのこと経営者と同じ立場で事業拡大のお手伝いを出来ないものか」と思い立ち、2005年春に証券会社をリタイアしてコンサルティング会社を設立。
ソフトバンクグループ率いる孫社長の憂鬱
ファーストリテイリングに次ぐ日経平均への寄与度の高さでも注目される
日本株は一見して堅調に戻り相場を演じつつあるようだが、一方では世界経済の不透明感の下で、リスクが高まっているという指摘が市場の内外でなされている。
投資のモノサシであるPER、PBRは過熱感はなく、平均配当利回りも2%台となっていて、多くの投資家は指標を眺めて下値を拾うスタンスで対応していると見られるが、下値での投資だけで上値を追う動きは少ない。この結果、出来高は薄くなり、株式市場への市場参加者が激減しているとの印象がある。
未来の成長より足下の業績重視で短期投資家は売り方に回り、マザーズ指数など中小型株指数の低迷が続いている。
こうした気重い相場環境の中で、このところの話題は孫社長率いるソフトバンクグループ<9984>に集中している。同社の先週末の株価は4,299円。時価総額は8.9兆円という水準だ。
有利子負債が17兆円を超える同社への評価は今、米国のシェアオフィス会社WeWork(ウィー社)のIPO見送りで一気に不透明感が増してきた。
既にソフトバンクGはビジョンファンドを通じて1兆円以上の投資を行っていたことからWeWorkのIPOはソフトバンクGの評価を高めると考えられたが、一転して見送りとなり反対にネガティブな見方が市場で起きた(5兆円の価値があると孫社長が述べてきた企業価値が1兆円以下、下手すれば数千億円に留まるとの見方)ことで、主力出資企業となっているソフトバンクGへの評価に疑念が生じている。
今にもつぶれるといった極端な見方がインターネット上では見られ、ソフトバンクGに投資している投資家には気が気ではない日々が続いているのではないだろうか。ソフトバンクG株は日経225銘柄に採用されており、同社株の日経平均に寄与する度合いはファーストリテイリングに次いで高い。そんなことで同社株の変動は相場全体にも影響をもたらす。
確かにAI群戦略からは外れたような印象のあるWeWork問題はネガティブには映るし、他の投資先であるUber株の大幅下落、中国企業の米国市場からの締め出しによる持分法会社アリババへの影響などソフトバンクGを率いる孫社長にとっては憂鬱な出来事ばかりが続く。
同社株を持っていない投資家も、多少でも保有する投資家も、これまでの実績を誇らしげに語ってきたカリスマ経営者である孫社長のこのタイミングの対応力に強い関心を寄せているだろう。
11月6日の4時から開催される2Q決算の説明会で孫社長は何を語るのか?この時期、ラグビー観戦以上に興味津々といったところだ。
image by : Koshiro K / Shutterstock.com
『億の近道』(2019年10月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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